青色申告とは?承認申請書の手続きと書き方、特別控除
個人事業主にとって、青色申告はとても有利な制度です。なぜなら、青色申告をするだけで、様々な特典を受けることができるからです。しかし、青色申告は有利な制度であるため、事前の届け出などが必要となります。ここでは、青色申告の概要や手続き方法など、青色申告について詳しく解説します。
青色申告とは?
青色申告とは、一定の要件を満たす個人事業主が、所得金額の計算や税務上において有利な特典を受けられる制度です。
我が国の税金の課税方式には「賦課課税制度」と「申告納税制度」があります。賦課課税制度とは、国や自治体が納める税額を計算し、納税者に伝える制度です。固定資産税や個人住民税などがこの方法を採っています。
一方、申告納税制度とは、納税者が自ら納める税額を計算し、税金を納付する制度です。所得税は、この制度を採用しています。
申告納付制度の前提にあるものは、正しい帳簿付けと証拠となる書類の保存です。日々の取引を正しく帳簿付けすることで、確定申告において正確な所得金額の計算を行うことができます。
また、証拠となる書類を確実に保存しておくことで、後で帳簿付けや確定申告が正しいかどうかを確認することができます。
申告納付制度を成り立たせるためには、より多くの納税者に、一定の水準で正しい帳簿付けと正確な税金の計算をしてもらわなければいけません。そこで、青色申告の制度を設け、一定の要件を満たす個人事業主に、有利な特典が受けられるようにしています。
【参照ページ】
No.2070 青色申告制度|国税庁
青色申告と白色申告の違い
個人事業主の確定申告には「青色申告」と「白色申告」があります。白色申告とは、簡単にいうと、青色申告以外の確定申告のことです。
青色申告をする場合には、一定の要件を満たす必要があります。逆に言うと、一定の要件を満たしていないと青色申告はできず、白色申告をすることになります。白色申告には、青色申告のような納税者が有利になる特典はありません。
また、青色申告と白色申告には、帳簿の記帳方法や帳簿書類の保存期間などに違いがあります。主な青色申告と白色申告の違いは、以下のようになります。
主な違い | 青色申告 | 白色申告 |
---|---|---|
事前の承認 | 必要 | 不要 |
帳簿の記帳方法 | 原則、複式簿記などにより記帳する | 原則、単式簿記などにより記帳する |
特典 | あり | なし |
帳簿書類の保存期間 | 原則7年(一部5年) | 原則5年(一部7年) |
決算書の種類 | 青色申告決算書 | 収支内訳書 |
では、青色申告と白色申告では、納税額にどれだけ違いが出るのでしょうか。
白色申告になると、青色申告にある「青色申告特別控除」や「青色事業専従者給与」などの特典(メリット)を受けることができません。特に、青色申告特別控除は、最大で65万円の控除があるため、同じ所得であっても青色申告よりも白色申告のほうが、納める税額は大きくなります。
例)所得金額190万円、税率5%、青色申告特別控除65万円の場合
※計算上、それ以外の控除などは考慮しない
・青色申告の場合
青色申告の場合、所得金額から青色申告特別控除を差し引いた金額に税率をかけて、納税額を求めます。
納税額=(所得金額190万円-青色申告特別控除65万円)×税率5%=62,500円
・白色申告の場合
白色申告の場合は、青色申告特別控除の適用はありません。所得金額にそのまま税率をかけて、納税額を求めます。
納税額=所得金額190万円×税率5%=95,000円
青色申告と白色申告では、95,000円-62,500円=32,500円も納税額に差が出ます。
今回は最も低い税率で計算しましたが、所得税は、所得が高ければ高いほど税率が上がる累進課税制度を採用しています。税率が高くなれば、さらに納税額に差が出ます。
青色申告が適用される条件
青色申告が適用される条件として「所得区分」「事前の申請書」「記帳方法」「申告の根拠」の4つがあります。それぞれの条件は、下記のとおりです。
1.所得区分
不動産所得、事業所得、山林所得のある人。それ以外の所得、例えば雑所得や譲渡所得などでは、青色申告は適用できません。
2.事前の申請書
青色申告をするには、事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要です。
3.記帳方法
青色申告するためには、次の記帳方法による帳簿の作成が必要です。
・正規の簿記に基づく方法
正規の簿記に基づく方法とは、毎日の帳簿付けとたな卸資産のたな卸やその他の決算整理を行った上で、貸借対照表と損益計算書が作成できる程度の簿記による記帳方法のことです。一般的には「複式簿記」が該当します。
詳細は後で述べますが、55万円以上の青色申告特別控除の適用を受けるためには、正規の簿記に基づく方法による記帳が必要です。
・簡易な簿記に基づく方法
簡易な簿記に基づく方法とは、仕入と売上の帳簿付けとたな卸資産のたな卸やその他の決算整理を行った上で、損益計算書が作成できる程度の簿記による記帳方法のことです。
この場合は、55万円以上の青色申告特別控除の適用を受けることができず、10万円の青色申告特別控除となります。
・現金基準による簡易な簿記に基づく方法
現金基準による簡易な簿記に基づく方法とは、現金の出納に関する事項と減価償却費に関する事項を記載した簿記による記帳方法のことです。現金基準による簡易な簿記に基づく方法を用いるためには、事前に所定の届け出が必要です。
4.申告の根拠
青色申告をするには、適正に所得計算をしていることを示すための「申告の根拠」が必要です。ここでいう申告の根拠とは、次の3つです。
・取引を記載した帳簿書類の備え付けと保管
不動産所得、事業所得、山林所得のうち複数の種類の所得がある場合は、それぞれの所得について必要です。
・決算整理とたな卸表の作成
毎年、12月31日付で、たな卸資産のたな卸やその他の決算整理を行い、たな卸表の作成が必要です。
・損益計算書や貸借対照表など、記帳方法により必要な書類を青色申告書に添付する必要があります。(通常、青色申告決算書を作成すれば、要件を満たします。)
【参照ページ】
はじめてみませんか?青色申告|国税庁
No.2070 青色申告制度|国税庁
電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。
青色申告承認申請の手続き
青色申告をするためには、事前に「青色申告承認申請書」の提出が必要です。青色申告承認申請書の提出先や提出期限は以下のとおりです。
・提出先:納税地の所轄税務署長
区分 | 提出期限 |
---|---|
新規に青色申告をしようとする場合(1月15日までの開業を含む) | 青色申告をしようとする年の3月15日まで |
1月16日以後の開業する場合 | 開業日から2か月以内 |
通常、青色申告承認申請書を提出してから、税務署から承認した旨の連絡がくることはありません。提出した年の12月31日までに、何の連絡がなければ、承認されたことになります。
青色申告承認申請書は、税務署の窓口や国税庁のサイトからダウンロードで入手できます。なお、開業と同時に青色申告をする場合は、青色申告承認申請書とともに開業届の提出も必要です。
【参照ページ】
A1-9 所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
青色申告承認申請書の書き方
ここでは、青色申告承認申請書の書き方について見ていきましょう。青色申告承認申請書の各欄には、次の事項を記載します。
(1)提出税務署、提出日
青色申告承認申請書を提出する税務署と提出日を記載します。どこの税務署に提出すればいいかわからない場合は、次の国税庁のサイトで調べることができます。
【参考ページ】
税務署の所在地などを知りたい方|国税庁
(2)基本情報
住所や氏名、電話番号、生年月日などの基本情報を記載します。屋号はなければ記載不要です。
住所地・居住地・事業所の違いは、次のとおりです。
- 住所地:自宅とオフィスが同じ場合(自宅で仕事をしている場合)にチェックをします。
- 居住地:海外を拠点にしている場合など、国内に住所がなく、日本で納税する場合などにチェックをします。
- 事業所:自宅とオフィスが違う場合は、オフィスの住所を記載し、チェックをします。
(3)青色申告をする年
青色申告を、開始する年を記載します。例えば、令和6年分から青色申告をする場合は「6」を記載します。
(4)事業所と所在地
複数の事業所や店舗がある場合のみ、その事業所名(○〇営業所など)と住所を記載します。
(5)所得の種類
青色申告をする所得にチェックをします。
(6)青色申告の取り消しや、取りやめについて
過去に、青色申告の取り消しや取りやめがあった場合は「有」にチェックをし、その日付を記載します。初めて青色申告をする場合は、そのような事象はないため「無」にチェックします。
(7)1月16日以後開業した場合と相続による事業承継の有無
1月16日以後開業した場合は、その日付を記載します。
相続による事業承継がある場合は、「有」にチェックをし、相続開始日や被相続人の氏名を記載します。ない場合は、「無」にチェックします。
(8)その他参考事項
・簿記方式
青色申告をするために、採用している簿記方式にチェックをします。
・備付帳簿名
青色申告をするために、作成している帳簿にチェックをします。作成が必要な帳簿は、簿記方式によって異なります。詳細は、後の「青色申告に必要な帳簿と書類」で説明しています。
【参照ページ】
所得税の青色申告承認申請書|国税庁
特別控除や専従者給与など青色申告のメリット
青色申告には、青色申告をするだけで受けられる特典(メリット)があります。青色申告の特典(メリット)には、様々なものがありますが、よく利用される代表的なものは以下のものです。
1.青色申告特別控除
青色申告特別控除とは、簡単にいうと、青色申告をしているだけで、所得金額から差し引くことができる控除のことです。青色申告特別控除は、事業所得と不動産所得で適用できます。山林所得では適用できないので、注意してください。
事業所得や不動産所得では、所得金額を「1年間の収入-1年間の必要経費」で計算します。一方、青色申告特別控除を適用した場合の所得金額は、次の計算式で求めます。
所得金額 =(1年間の収入-1年間の必要経費)- 青色申告特別控除
個人事業主の経費の金額はおおよそ決まっており、節税のために所得金額を減らすことはなかなかできません。そのような状況の中、青色申告特別控除は青色申告をしているだけで所得金額から差し引くことができるので、納税者にとても有利です。
青色申告特別控除の金額は、大きく分けて55万円(または65万円)と10万円の2つに分かれます。それぞれの控除額を適用するには、次の要件を満たす必要があります。
① 55万円控除(または65万円控除)
55万円控除は、次の要件をすべて満たす必要があります。
・正規の簿記の原則により記帳していること
・貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付して提出していること
・確定申告の提出期限内に確定申告書・青色申告決算書を提出していること
上記の要件を満たし、さらに電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は、65万円の青色申告特別控除を受けることができます。
② 10万円控除
上記の55万円控除の要件を満たさない場合は、10万円控除になります。例えば、青色申告をしている場合で、簡易な簿記に基づく方法で記帳しているケースや、確定申告の提出期限を遅れて確定申告書を提出したケースなどは、10万円控除になります。
2.青色事業専従者給与
所得税では、配偶者や親族に対する給料を経費にすることはできません。なぜなら、家族の財布はひとつという考え方があるからです。
しかし、青色申告をしている規模の事業では、配偶者や親族が事業に深く関わっているケースも考えられるため、青色事業専従者に該当する配偶者や親族に対する給料は、一定の要件のもと、経費にすることができます。これを青色事業専従者給与といいます。
青色事業専従者とは、次のすべての要件を満たす人のことです。
・青色申告者と生計を一にする配偶者や親族であること
・その年の12月31日現在で15歳以上の人であること
・その年の6か月超の期間を、事業に専ら従事していること
青色事業専従者給与を経費にするためには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。青色事業専従者給与に関する届出書の提出先や提出期限は、次のとおりです。
・提出先:納税地の所轄税務署長
区分 | 提出期限 |
---|---|
新たに青色事業専従者給与を経費にしようとする場合(1月15日までの開業、新規に専従者がいる場合を含む) | 経費にしようとする年の3月15日まで |
1月16日以後に開業または、新規に専従者がいる場合 | 開業日または専従者がいる日から2か月以内 |
青色事業専従者給与に関する届出書は、税務署の窓口や国税庁のサイトからダウンロードで入手できます。
青色事業専従者給与に関する届出書には、青色事業専従者の氏名や職務内容、給与金額や支給時期などを記載します。記載内容よりも多い金額を支払ったり、支払方法が異なったりする場合には、経費に認められなくなるので注意しましょう(記載内容よりも少ない支給の場合は認められます)。
例えば、月10万円のところが月12万円の支給がある、振込のところ現金払いとなっているなどの場合では、経費に認められません。また、そもそも、青色事業専従者給与に関する届出書に記載した支給額が、業務内容に対して過大となっている場合は、経費と認められません。
青色事業専従者給与を経費にしている場合は、青色事業専従者が配偶者なら配偶者控除が、扶養家族なら扶養控除が受けられなくなるので、注意が必要です。
※青色事業専従者給与に関する届出書を提出していても、青色事業専従者給与を支払わず、配偶者控除や扶養控除の適用を受けることは可能です。
3.貸倒引当金
貸倒引当金とは、売掛金や貸付金などについて、将来起こると思われる貸倒れ(回収不能)に対する損失の見込額を、あらかじめ今年度の経費に計上しておくというものです。あらかじめ経費にしておくことで、いざ売掛債権などに貸倒れが起こった場合に、損益計算書などへの大きな影響を抑えることができます。
貸倒引当金を設定できるのは、青色申告をしている場合のみです。設定できる貸倒引当金の金額は、一括評価や個別評価の方法で求めます。
4.純損失の繰越しと繰戻し
事業をしていると、赤字が出てしまうこともあります。青色申告をしていると、赤字を翌年以降3年間にわたって、繰り越すことができます。これを「純損失の繰越し」といいます。例えば、今年度が30万円の赤字、翌年度が50万円の黒字の場合で見てみましょう。
・白色申告の場合
白色申告の場合、今年度は赤字のため、納める税金はありません。しかし、翌年度は50万円の黒字に対して税金が課されます。
・青色申告の場合
青色申告の場合も、今年度は赤字のため納める税金はありません。純損失の繰越しをすれば、今年度の赤字は、翌年度に繰り越されます。
そのため、翌年度は「50万円の黒字-前年度の赤字30万円=20万円」に対してのみ、税金が課されます。純損失の繰越しを行う場合は、確定申告書第四表(損失申告用)の提出が必要です。
また、前年も青色申告している場合は、赤字を前年度に持っていくこともできます。前年度が黒字で、所得税を支払っている場合は、今年の赤字を前年のものとみなし、払い済みの所得税の還付を受けることができます。これを「純損失の繰戻し」といいます。
ただし、純損失の繰戻しをした場合は、税務調査の対象となる可能性もあります。そこで、一般的には、純損失の繰越しを選ぶことが多いです。
5.少額減価償却資産の特例
1つあたりの取得価額が10万円以上のものは、固定資産として減価償却をしなければなりません。減価償却では、取得価額を取得年に一括で経費にはできず、複数年に渡って経費にします。
ただし、青色申告をして一定の要件を満たした場合は、取得価額が30万円未満である固定資産を、取得年度に一括で経費にすることができます(取得価額の合計額300万円が限度)。これを「少額減価償却資産の特例」といいます。経費にできる金額が多くなるため、大きな節税効果が見込めます。
そのほか、青色申告の特典(メリット)には、各種特別税額控除や他の減価償却の特例などがあります。
【参照ページ】
No.2072 青色申告特別控除|国税庁
No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁
No.2070 青色申告制度|国税庁
青色申告のやり方
事前に「青色申告承認申請書」の提出を行うなど、一定の要件を満たせば、青色申告をすることができます。では、青色申告はどのようにすれば、できるのでしょうか。ここでは、青色申告のやり方・流れについて見ていきましょう。
青色申告は、確定申告時期にすぐにできるわけではありません。普段から青色申告に合わせた方法でさまざまな処理を行う必要があります。「日々」「決算期」「申告時期」に分けて、どのようなことをしなければならないか見てみましょう。
・青色申告で「日々」に行うこと
青色申告では、後で紹介する様々な帳簿を作成し、保管しておく必要があります。青色申告に必要な帳簿は、すぐにできるわけではなく、少しずつ作成しなければなりません。
そこで、青色申告で「日々」に行うことは、主に記帳と領収書などの管理です。記帳では、日々の取引を仕訳し、仕訳帳や総勘定元帳などに記帳していきます。領収書などは、月ごとにファイルするなど、自分に合った方法で無くさないように管理します。
・青色申告で「決算期」に行うこと
決算期とは、年末(12月31日付)に行う処理のことをいいます。これを「決算処理」といいます。決算処理では、主に、商品などのたな卸や減価償却などの決算整理を行い、その結果を記帳します。また、たな卸商品がある場合は、たな卸表の作成が必要です。
決算整理が終わったら試算表を作成し、それを基に貸借対照表や損益計算書を作成します。
・青色申告で「申告時期」に行うこと
2月~3月の申告時期に行うことは、確定申告書類の作成です。青色申告の場合、原則「青色申告決算書」と「確定申告書第一表、第二表」を作成します。
青色申告決算書は、所得金額を求めるための書類です。1年間の収入金額や勘定科目ごとの必要経費の金額、その他の必要事項などを記載し、所得金額を求めます。
確定申告書は、納める税金の金額を求めるための書類です。青色申告決算書で求めた、収入金額や所得金額などを転記し、そのほか所得控除などを記載して、納める税金の金額を求めます。
作成した青色申告決算書と確定申告書は原則、3月15日までに税務署に提出します。また、確定申告書の提出と同時に、税金の納付も必要となります。
【参照ページ】
はじめてみませんか?青色申告|国税庁
青色申告決算書の書き方
青色申告をするためには、確定申告時期に青色申告決算書を作成する必要があります。青色申告決算書は、全部で4ページあります。それぞれのページで必要な事項を記載して、作成します。また、事業所得と不動産所得では、青色申告決算書の様式が異なります。
ここでは、事業所得における青色申告決算書の書き方を見ていきます。青色申告決算書の各ページの書き方は、次のようになります。
●青色申告決算書1ページ:損益計算書
青色申告決算書の1ページは、損益計算書となっています。
書き方は、次のとおりです。
(1)基本情報
令和何年分の青色申告決算書なのかを記載し、住所や氏名、電話番号などの基本情報を記載します。屋号や加入団体名など、無い場合は記載する必要はありません。
(2)売上(収入)金額と売上原価
青色申告決算書2ページ目で計算した、1年間の売上(収入)金額と仕入金額を記載します。
また、期首商品棚卸高には前年末の棚卸金額を、期末商品棚卸高には今年末の棚卸金額を記載して「売上原価」を求めます。
最後に、売上(収入)金額から売上原価を差し引き、「⑦差引金額」を求めます。
(3)経費
勘定科目ごとに、1年間の経費の金額を記載します。総勘定元帳を作成している場合は、総勘定元帳の数字を転記します。
また、普段使っている勘定科目が、青色申告決算書に印字されていない場合は、空欄に追記します。
(4)各種引当金・準備金等
貸倒引当金や専従者給与などの各種引当金や準備金等があれば、記載します。無ければ、空白のままで問題ありません。
(5)青色申告特別控除額
55万円(または65万円)もしくは10万円の青色申告特別控除額を記載します。青色申告特別控除額は、黒字の金額までしか使えません。
例えば、黒字35万円の場合、55万円の青色申告特別控除額が適用可能な場合であっても、青色申告特別控除は黒字の35万円までしか使えません。このケースでは、青色申告特別控除額の欄は「350000」と記載します。
(6)所得金額
最後に、所得金額を求めて記載します。
●青色申告決算書2ページ:月別売上(収入)金額及び仕入金額など
青色申告決算書の2ページは、損益計算書における各項目の詳細を記載するページです。
書き方は、次のとおりです。
(1)月別売上(収入)金額及び仕入金額
毎月の売上(収入)金額と仕入金額の数字を記載します。総勘定元帳や売上帳、仕入帳などから数字を転記します。
販売する商品を自分で使った場合は、その定価を「家事消費等」欄に記載します。ただし、家事消費等の金額は、仕入金額または定価の70%相当額のうち、いずれか高いほうの金額で良いとされているため、通常、仕入金額または定価の70%相当額の金額を記載します。
事業所得における本業以外の収入があれば「雑収入」欄に金額を記載します。
(2)給料賃金の内訳
専従者以外の従業員がいる場合は、従業員の氏名や年齢、給料の支給額などを人ごとに記載します。
(3)専従者給与の内訳
青色事業専従者に給料を支給している場合は、青色事業専従者の氏名や続柄、年齢、給料の支給額などを青色事業専従者ごとに記載します。
(4)貸倒引当金繰入額の計算
貸倒引当金を計上する場合に、記載します。通常、貸倒引当金を計上する場合は、個別評価ではなく、一括評価によって貸倒引当金を求めることが多く、一括評価による本年分繰入額の各欄に数字を記入します。
(5)青色申告特別控除額の計算
ここでは、青色申告特別控除額の計算をします。注意したいのが、不動産所得と事業所得の両方がある場合です。
両方の所得がある場合、まずは不動産所得から青色申告特別控除額を差し引き、青色申告特別控除額が残っている場合は、事業所得から差し引きます。
●青色申告決算書3ページ:減価償却費の計算など
青色申告決算書の3ページも、損益計算書における各項目の詳細を記載するページです。
書き方は、次のとおりです。
(1)減価償却費の計算
備品や機械など、所有している事業用の固定資産がある場合は、減価償却費を経費にします。
備品や機械などは購入年度だけでなく、複数年にわたって、売上や事業の継続などに貢献します。そのため、購入年度の1年のみに購入金額のすべてを経費にせずに、複数年にわたって経費にします。
今年度にいくら経費にできるのか計算することを「減価償却」といい、今年度、経費にできる金額を「減価償却費」といいます。減価償却費の計算欄には、資産ごとに名称や数量、取得価額、償却方法などの情報を記載します。
減価償却の方法には「定額法」と「定率法」の2つがありますが、個人事業主の場合は、原則、定額法になります。
なお、個人事業主は、減価償却を必ず行わなければなりません。経費に計上し忘れた場合、その部分は後から経費にすることができないので、注意が必要です。
(2)利子割引料の内訳
銀行などの金融機関以外からの借り入れがあり、利息を支払っている場合のみ、記載します。
(3)地代家賃の内訳
事務所の家賃や月極の駐車場代など、地代家賃の支払いがある場合に記載します。例えば、自宅兼オフィスなどの場合の家賃は、プライベートの部分と事業で使っている部分に、家賃の金額を分け(按分)て、事業で使っている部分の金額のみ経費にできます。
案分は面積や仕事時間など、整合性のある基準で行います。例えば、自宅全体の床面積のうち、オフィスとして使っている面積が30%だった場合は、30%のみ経費になります。年間家賃が120万円の場合、30%の36万円が経費となります。
地代家賃の内訳では、全体の金額と経費部分の金額の両方を記載します。「本年中の賃借料・権利金等」の欄の賃のところに全体の数字を(上記の例だと120万円)、「左のうち必要経費算入額」の欄に経費の数字(上記の例だと36万円)を記載します。
(4)税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳
税理士や弁護士などに、報酬の支払いがある場合は、税理士や弁護士の情報と支払金額などを記載します。
(5)本年中における特殊事情
前年度と比べて、売上や所得などに大きな増減があった場合に、その事情を記載します。特殊事情がなければ、空欄でも問題ありません。
●青色申告決算書4ページ:貸借対照表
青色申告決算書の4ページは、期首と期末における資産や負債の金額を記載する貸借対照表のページです。55万円(または65万円)の青色申告特別控除の適用を受けるためには、貸借対照表の作成が必要です。書き方は次のとおりです。
(1)資産の部
現金や預金、売掛金などの資産について、期首(1月1日)と期末(12月31日)の金額を記載します。総勘定元帳や現金出納帳、固定資産台帳などから、金額を記載します。
事業主貸は、簡単に言うと、個人がプライベートなどで使った事業用のお金のことです。
(2)負債・資本の部
買掛金や未払金、借入金などの負債や元入金などの資本について、期首(1月1日)と期末(12月31日)の金額を記載します。総勘定元帳や買掛帳などから、金額を記載します。
事業主借は、簡単にいうと、個人がプライベートの資金を事業に使った際のその金額のことです。
元入金は、法人における資本金のようなもので、開業前に開業のために使った資金や、今までの事業主貸・事業主借などが相殺されている数字になります。
(3)製造原価の計算
製造業など製造原価を使って、損益の計算をしている場合のみ記載します。それ以外の業種は、記載不要です。
青色申告決算書は、通常、2ページ目、3ページ目から作成し、その結果を受けて、次に1ページ目、4ページ目を記載します。簿記方式によって、青色申告決算書において作成するページは以下のように異なります。
正規の簿記(55万円または65万円控除) | 簡易な簿記(10万円控除) | 現金基準(10万円控除) |
---|---|---|
損益計算書(1ページ)、所得の計算に係る明細書(2ページ・3ページ)、貸借対照表(4ページ) | 損益計算書(1ページ)、所得の計算に係る明細書(2ページ・3ページ) | 損益計算書(1ページ)、所得の計算に係る明細書(2ページ・3ページ) |
10万円控除の場合、4ページの貸借対照表は必要ありませんが、実務上は、わかる範囲で記載します。
【参照ページ】
令和4年分 青色申告決算書(一般用)の書き方|国税庁
青色申告に必要な帳簿と書類
次に、青色申告に必要な帳簿と書類について見ていきましょう。青色申告に必要な帳簿と書類は、自分がどの簿記方式・記帳方法を採用しているのかによって、次のように異なります。
1. 正規の簿記の原則による記帳
55万円(または65万円)の青色申告特別控除を受けるためには、正規の簿記の原則による記帳が必要です。この場合に必要な帳簿と書類には「仕訳帳」「総勘定元帳」「各補助記入帳」「各補助元帳」があります。それぞれについて、見ていきましょう。
●仕訳帳
仕訳帳は、すべての取引について、取引の発生順に仕訳を記入する帳簿です。取引年月日と内容、勘定科目と金額を取引の発生順に記載します。日々の取引をその都度、記入していきます。
●総勘定元帳
総勘定元帳は勘定科目ごと、取引の発生順に、取引年月日と内容、相手勘定科目と金額を記載します。日々の取引をその都度、記入している仕訳帳から、勘定科目ごとに整理して、総勘定元帳を作成します。
●各補助記入帳
補助記入帳とは、勘定科目ごと・取引ごとに詳細を記入する帳簿です。補助記入帳には次のものがあります。
・現金出納帳
・当座預金出納帳
・小口現金出納帳
・売上帳
・仕入帳
・受取手形記入帳
・支払手形記入帳
補助記入帳は必要に応じて作成します。また、原則、1勘定科目につき1つです。
●各補助元帳
補助元帳とは、元帳の補助となる帳簿で、特定の勘定科目の明細を記載します。補助元帳には、次のものがあります。
・商品有高帳
・売掛金元帳
・買掛金元帳
・固定資産台帳
補助元帳は、必要に応じて作成します。商品ごとや得意先ごとなど、1つの勘定科目に複数の補助元帳があります。
2. 簡易帳簿による(簡易な簿記に基づく)記帳
簡易帳簿による記帳方法では、10万円の青色申告特別控除しか受けることができません。ただし、必要な帳簿と書類は、少なくて済みます。
必要な帳簿と書類は、業種によっても異なりますが、一般的には、次の5つが必要です。
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・経費帳
・固定資産台帳
3. 現金基準による簡易な簿記による記帳
この場合も原則、簡易帳簿による(簡易な簿記に基づく)記帳と必要な帳簿と書類は同じです。ただし、現金基準による簡易な簿記では、現金の出納に関する事項と減価償却費に関する事項のみの記載で良いため、現金出納帳、経費帳、固定資産台帳の3つのみを作成しているケースが多いです。
●帳簿や書類の保存期間
青色申告では、帳簿や書類を保存すべき期間が法律で決まっています。青色申告における帳簿や書類の保存期間は、次のとおりです。
保存が必要な帳簿・書類 | 内容 | 保存期間 |
---|---|---|
帳簿 | 仕訳帳や総勘定元帳、現金出納帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳など | 7年 |
書類 | 決算関係書類(損益計算書、貸借対照表、たな卸表など) | 7年 |
書類 | 現金預金取引等関係書類(領収書、預金通帳、小切手控など) | 7年※ |
書類 | その他(請求書、見積書、契約書、納品書など) | 5年 |
※前々年分の事業所得や不動産所得の金額が300万円以下の場合は、保存期間は5年です。
【参照ページ】
はじめてみませんか?青色申告|国税庁
青色申告会や国税庁などの青色申告支援
確定申告、特に青色申告は、個人事業主1人で行うのは難しいことがあります。そこで、青色申告会や国税庁などでは、青色申告をするための支援を行っています。
・青色申告会
青色申告会とは、一般社団法人 全国青色申告会総連合会のもと、個人事業主を中心として組織される納税者団体のことです。
青色申告会は全国各地にあり、青色申告の相談から経営の相談まで、個人事業主の困りごとを解決するための多くの施策を行っています。確定申告時期になると、青色申告の相談会も定期的に開催されているので、参加してみるのも良いでしょう。
青色申告会に加入するためには、入会金や年会費が必要です。入会金や年会費の金額は、各青色申告会によって異なります。
・税務署や国税庁
税務署や国税庁でも、青色申告や税金の相談をすることができます。税務署では、確定申告の時期になると、税務署内で申告相談を行っています。
税務署によっては、署外に相談会場を設けているケースもあります。確定申告時期になったら、相談会場が国税庁のサイトなどで公表されるので、相談会に行ってみるのも良いでしょう。
また、国税庁のサイトでも「チャットボット(ふたば)」や、「タックスアンサー(よくある税の質問)」が用意されています。チャットボット(ふたば)に青色申告や税金の相談をしたり、タックスアンサー(よくある税の質問)で調べたりすることができます。
チャットボット(ふたば)は、土日でも24時間利用可能(メンテナンス時を除く)です。一度利用してみてはいかがでしょうか。
その他、全国の税理士会などでも、青色申告の相談会が開催されていることもあります。
【参照ページ】
青色申告会のポータルサイト|一般社団法人 全国青色申告会総連合
【申告相談】|国税庁
税についての相談窓口|国税庁
青色申告に関するよくある質問
青色申告とは、一定の要件を満たす個人事業主に、所得金額の計算や税務上において有利な特典が受けられる制度のことをいいます。
所得税は、納税者が自ら納める税金を計算し、税金を納付する「申告納税制度」を採用しています。申告納付制度の前提は、正しい帳簿付けと証拠となる書類の保存です。日々の取引を正しく帳簿付けすることで、確定申告で、正確な所得金額の計算を行うことができます。
また、証拠となる書類を確実に保存しておくことで、後で帳簿付けや確定申告が正しいかどうかを確認することができます。
申告納付制度を成り立たせるためには、より多くの納税者に一定の水準で正しい帳簿付けと正確な税金の計算をしてもらわなければいけません。そこで、青色申告の制度を設け、一定の要件を満たす個人事業主に、有利な特典が受けられるようにしています。
青色申告が適用される条件には「所得区分」「事前の申請書」「記帳方法」「申告の根拠」があります。
青色申告と白色申告の大きな違いは、記帳方法と特典(メリット)の有無です。
個人事業主の確定申告には「青色申告」と「白色申告」があります。白色申告とは、簡単にいうと、青色申告以外の確定申告のことです。
青色申告をする場合には、一定の要件を満たす必要があります。逆に言うと、一定の要件を満たしていない場合は、青色申告はできず、白色申告をすることになります。青色申告では、複式簿記などを使って記帳しますが、白色申告では単式簿記などを使って記帳します。
白色申告には、青色申告のような納税者が有利になる特典はありません。また、青色申告と白色申告には、帳簿書類の保存期間などにも違いがあります。主な青色申告と白色申告の違いは、以下のようになります。
主な違い 青色申告 白色申告 事前の承認 必要 不要 帳簿の記帳方法 原則、複式簿記などにより記帳する 原則、単式簿記などにより記帳する 特典 あり なし 帳簿書類の保存期間 原則7年(一部5年) 原則5年(一部7年) 決算書の種類 青色申告決算書 収支内訳書 青色申告をしないと、白色申告になります。白色申告になると、青色申告にある、青色申告特別控除や青色事業専従者給与などの特典(メリット)を受けることができません。
特に、青色申告特別控除は、最大で65万円の控除があるため、同じ所得であっても青色申告よりも白色申告のほうが、納める税額が大きくなります。
例)所得金額190万円、税率5%、青色申告特別控除65万円の場合
※計算上、それ以外の控除などは考慮しない・青色申告の場合
青色申告の場合、所得金額から青色申告特別控除を差し引いた金額に税率をかけて、納税額を求めます。納税額=(所得金額190万円-青色申告特別控除65万円)×税率5%=62,500円
・白色申告の場合
白色申告の場合は、青色申告特別控除の適用はありません。所得金額にそのまま税率をかけて、納税額を求めます。納税額=所得金額190万円×税率5%=95,000円
青色申告と白色申告では、95,000円-62,500円=32,500円も納税額に差が出ます。所得金額がある場合は、青色申告をしないと納税額が高くなります。
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