タッチ決済 (非接触型決済)とは?歴史・メリット・導入方法をご紹介

クレジットカードを決済端末にピッとかざすだけで、決済を完了できる「タッチ決済」。最近ではコンビニエンスストアや大手飲食店でも取り扱われるようになり、「使ったことがある」「見たことがある」という人も少しずつ増えているかもしれません。完全非接触で決済を行えることから、できるだけ接触機会を減らしたい時代にふさわしい決済方法ともいえます。

ところが国内では割と新しい決済方法でもあることから、いざ導入するとなるとさまざまな疑問点が頭に浮かぶかもしれません。この記事では「うちもタッチ決済に対応したほうがいいのだろうか……」と悩む事業主に向けて、タッチ決済の基礎知識から導入のメリット、簡単に低コストで導入できる方法などを紹介します。

目次



タッチ決済とは

タッチ決済では、冒頭でも触れたように、クレジットカードを決済端末の近くにかざして決済を行います。

jp-blog-touchpayment04

▲Square リーダーでタッチ決済をしている様子

ここではタッチ決済についてよくある質問への回答を見ながら、タッチ決済の理解を深めていきましょう。

コンタクトレス決済ってタッチ決済と同じこと?

タッチ決済は、コンタクトレス決済、非接触型決済などとも呼ばれます。この記事では「タッチ決済」という名称を用いて、説明を進めていきます。

交通系ICカードやスマホでの決済も「タッチ決済」のうち?

決済端末にかざして行う決済方法は、大まかにいうと、全てタッチ決済と呼ぶことができます。ところが、多くの決済サービスやカードブランドでは、

(1) クレジットカードをかざして決済をする……タッチ決済
(2) 交通系ICカードや交通系ICを登録したスマートフォンなどをかざして決済をする……電子マネー決済

と分けて説明することが多いようです。理由として、両者が異なるデータ通信技術の仕様を採用していることが挙げられます。

「どっちも非接触型決済なのでは……」と思うかもしれません。たしかにクレジットカードも、交通系ICカードも、国際標準規格のNFC(Near Field Communicationの略称)という近距離無線通信技術を使用しているため、非接触決済ができる、という共通点を持ちます。NFCは、

  • NFC Type A/B
  • NFC Type F

と大きく二つの種類に分かれています。クレジットカードのタッチ決済に採用されているのは、NFC Type A/B、電子マネーの多くに採用されているのは、後者のNFC Type Fです。コンビニエンスストアなどで支払いをすると、クレジットカードをかざす端末と、電子マネーをかざす端末が違うことに気づくかもしれません。これは仕様によって、読み取り端末が異なるため(※)です。

※両方の仕様に対応している読み取り端末もあります。

詳しくは以下の表から見てみましょう。

jp-touchpayment

より細かな違いについては「タッチ決済とは?歴史と成り立ちを知ろう!」でも説明しています。

どのクレジットカードもタッチ決済に対応しているの?

どのクレジットカードもタッチ決済に対応しているとは限りません。以下のタッチ決済機能搭載マークがクレジットカードの表面についていれば、タッチ決済を受け付けることができます。
jp-blog-R12d launch creative 06

タッチ決済に対応しているカードブランドって?

現時点では、以下のカードブランドからタッチ決済機能付のクレジットカードが発行されています。

カードブランド 名称
Visa Visaのタッチ決済
Mastercard Mastercard コンタクトレス
American Express アメックスのタッチ決済
JCB JCB コンタクトレス(タッチ決済)
Diners Club ダイナースクラブ コンタクトレス(タッチ決済)

タッチ決済はPINコードの入力も、サインも不要って本当?

一定額以内であれば、PINコード(暗証番号)の入力も、サインも不要です。PINコードの入力やサインが不要な金額の上限は、お客様が利用しているカードブランドによって異なります。

タッチ決済の歴史

前項ではタッチ決済を「クレジットカードを決済端末にかざして行う決済」と定義しました。しかしながら、端末にかざすことで決済ができる技術、近距離無線通信(以下、NFC)がクレジットカードに採用されるのは、ずいぶん後のことでした。

NFCがはじめて採用されたもののなかには、米エクソンモービルのスピードパスが挙げられます。スピードパスは1997年に誕生した、キーホルダー型の非接触決済ツールです。給油機のリーダーにかざすことで給油がはじめられる、当時からしてみると画期的なツールでした。カードをかざしてバスに乗車できる韓国の「Uパス(当時の名称はバスカード)」、カードをかざして地下鉄の改札機を通れる香港の「オクトパスカード」などが登場しはじめたのも、ちょうどこの頃でした。一方、日本でNFCが採用されたのは、2001年に使用が開始された非接触交通系ICカード、「Suica(スイカ)」がはじめてでした。

参考: 2001年11月18日(日)Suicaデビュー!(JR東日本)

次にNFCの技術が搭載されたのは、携帯電話です。2004年に登場したNTTドコモのおサイフケータイを皮切りに、フィンランドのノキアなど、世界各国で決済端末にかざして支払える携帯電話が登場するようになりました。

参考: iモード FeliCa サービスを開始-「おサイフケータイTM」はじまる-(2004年6月16日、NTTドコモ)

その後も技術は目まぐるしく発展を続け、2000年代にはVisa、Mastercard、American Expressの三社のクレジットカードにタッチ決済の機能が搭載されました。Visaのタッチ決済が早い段階で普及したのは、オーストラリアです。2011年に大手スーパーマーケットチェーンに導入されたことをきっかけに、利用者が続々と増えていったそうです。その後、イギリスやシンガポール、スペイン、イタリアでもタッチ決済機能付クレジットカードの普及が拡大し、2020年12月に発表された調査によれば、全世界のVisaによる対面でのクレジットカード利用のうち、43%(※)はタッチ決済だと発表されています。

※対面決済に限る

参考:
2020年を総括 Visaのタッチ決済、国内における普及が急速に拡大(Visa 株式会社)

タッチ決済とは?歴史と成り立ちを知ろう!」では、タッチ決済に使用される近距離無線通信規格(NFC)の歴史についても詳しく説明しています。

日本におけるタッチ決済の認知度

国内でタッチ決済の利用が増えはじめたのは、5大国際クレジットカードブランドが普及活動を本格化した2019年頃だといえます。オーストラリアなどと比べると少し遅れをとっていますが、2020年には利用可能な場所がぐんと増え、国内でも利用者の増加が見られます。

たとえば2020年6月からは、全国のセブンイレブン店舗でVisa、Mastercard、JCB、American Expressのタッチ決済が一斉に利用できるようになりました。2020年12月にVisaが発表した調査によれば、対応端末の設置数は2020年9月時点で、昨年同月に比べて3.2倍に増加。内訳を見ると、コンビニエンスストアでの設置数が8倍増加、スーパーマーケットでの設置数は30倍にも及んでいました。コンビニエンスストアに関しては、全体の7割で利用が可能だそうです(※1)。さらにアメリカン・エキスプレスの調査によれば、同社のタッチ決済利用者が2019年1月と比べて、2020年9月では10倍に伸びたそうです。

※1. 2020年12月時点

また、Visaのタッチ決済は世界の500以上の公共交通機関でも導入されていて、日本でも2020年の7月に初めて高速バスに導入されました。以降、全国各地の公共交通機関で実証実験が実施されています。

このように、2020年は国内でのタッチ決済の認知度を高めるために、さまざまなカードブランドが動き出した年でした。また、Squareの調査によれば、非接触決済を受け付けたことのある加盟店は、2020年2月の時点では26%だったところ、2021年2月には55%まで伸びています。この背景には新型コロナウイルスの感染拡大が関係しているといえるでしょう。日本でも自粛生活やテレワークに加えて、さまざまな場面で「非接触」が浸透しました。タッチ決済は便利な決済方法としてだけでなく感染を防ぐための安全で安心できる「非接触型決済」の一つとして消費者が進んで利用したい決済方法になることが予想されます。

jp-blog-touchpayment05

タッチ決済が進む諸国と国内の違いなどについては「海外との違いを知ろう!国内でのタッチ決済の今と未来」でも触れています。

参考:
VISA、タッチ決済普及へ 東京五輪、訪日客に照準(朝日新聞)
2020年を総括 Visaのタッチ決済、国内における普及が急速に拡大(Visa 株式会社)
アメックスのタッチ決済、コロナ禍で約10倍に伸長(2020年11月30日、BCN+R)
Visaのタッチ決済、15倍に拡大。日本での普及が進む(2020年12月17日、Impress Watch)
日本で初めて公共交通機関の車内にVisaのタッチ決済を導入!(Visa 株式会社)

タッチ決済を受け付けるメリットとは

他国に先駆けてタッチ決済が普及したオーストラリアでは、対面でのクレジットカード決済のうち、90.6%(※)がタッチ決済だそうです。

※2017年時点、ウエストパック銀行が発行しているVisaのユーザーに限る

参考: Latest data shows contactless payments approach saturation point(Westpac)

日本ではまだ認知拡大の段階ではあるものの、感染症の影響も踏まえて、タッチ決済の利用者は今後さらに増えていくことが予想されます。ここでは店舗にタッチ決済を導入する利点をあらためて確認していきましょう。

決済スピードが早い

とくに混み合う時間帯などで、一番時間をかけたくないのは支払いシーンかもしれません。飲食店の場合、食べたあとすぐに出たいお客様にとって、レジ待ちの時間は不満を募らせ、再び来店する意欲を薄れさせてしまう要素かもしれません。小売店の場合、レジ待ちの列が長すぎると、購入を諦めるお客様が出てくる可能性もあります。タッチ決済なら、Suicaなどを自動改札機にかざしたときと同じくらいのスピードで、決済が完了します。一定額以内であればPINコード(暗証番号)の入力もサインも不要なので、滞りなく決済を終えることができます。また、現金のようにお釣りを返すなどの手間がないので、お客様がカードを端末にかざしている隙に商品の袋詰めをはじめるなど、店舗側の業務効率向上にもつながるといえるでしょう。

参考:Visaデビット、Visaのタッチ決済、1,000万枚突破!(2019年9月12日、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社)

接触機会を減らせる

現金でのやりとりで、どうしても気になるのが人との接触です。ある調査では、感染症が拡大しはじめてから現金の受け渡しに抵抗を「やや感じるようになった」と「強く感じるようになった」と答える消費者が、合わせて6割以上にも及ぶことがわかりました。

参考:【調査】現金での決済に6割超が「抵抗を感じる」、キャッシュレス決済の意識変容(シェアリングテクノロジー株式会社)

口には出さずとも、ちょっとした接触に不安を感じるお客様は少なくないかもしれません。タッチ決済ならお客様自身がカードを決済端末にかざすだけで支払いを終えられるので、現金やカードの受け渡しという接触機会をなくすことができます。

タッチ決済を導入する方法

タッチ決済を導入する方法は大きく二つあります。

  • CAT端末を導入する
  • モバイル決済端末を導入する

冒頭では交通系ICを含む電子マネー決済とクレジットカードのタッチ決済は同じように非接触で行う決済ではあるものの、データ通信の規格が異なるため、それぞれ必要な端末が異なる点に触れました。ところが最近では、いずれにも一台で対応できるCAT端末やモバイル決済端末も登場しています。

CAT端末とモバイル決済端末、それぞれの特徴を理解するには、以下の表をお役立てください。

jp-blog-touchpayment03

Squareでタッチ決済を導入しよう!

Squareでは、以下のタッチ決済に対応したモバイル決済端末(Square リーダー)を提供しています。

  • Visa:Visaのタッチ決済
  • Mastercard:Mastercard コンタクトレス
  • American Express:アメックスのタッチ決済
  • JCB:JCB Contactless(タッチ決済)

※詳しくはこちらからも確認できます。

jp-blog-touchpayment06

▲Square リーダーでタッチ決済を受け付けている様子

タッチ決済はもちろんのこと、Square リーダーなら、ICチップ付のクレジットカード、また各種電子マネーにも、たったの一台で対応できます。

タッチ決済に対応するために必要なのは、決済端末とタブレット端末(またはスマートフォン)だけ。従来のようにスペースを占領する大きなレジとは一変、Squareなら小さなレジスペースでも難なく収まるサイズ感です。

決済を受け付けるには、端末の電源を入れて、モバイル回線、またはWi-Fiを利用できるスマートフォンやタブレットとBluetooth接続します。お会計の打ち込みや商品登録などは、タブレット端末などに無料でダウンロードできるSquare POSレジアプリから行います。決済端末はコードレスで使えるので、屋外イベントに出店した際などでも、キャッシュレス決済に対応することが可能です。

ビジネス用に使えるタブレットがない場合は、タブレットの購入が不要なオールインワン決済端末(Square ターミナル)の導入を視野に入れてみてもいいかもしれません。

  • POSレジアプリの操作
  • キャッシュレス決済の受け付け
  • レシートの印刷

上記が全てたったの一台で行えるため、タブレット端末・決済端末・レシートプリンターをそれぞれ個別に揃えるよりも低コストで導入できる可能性があります。

charge-07

どちらの端末を選んでも、導入にかかるコストは決済端末代金のみ(Square リーダー:4,980円税込、Square ターミナル:39,980円税込)で、月額利用料金はかかりません。

タッチ決済(※)だけのご利用で十分という場合は、「Tap to Pay on Android」の機能が便利です。お手持ちのAndroidのスマートフォンにSquare POSレジアプリをダウンロードするとタッチ決済が受け付けられるようになる機能で、無料で使うことができます。詳しい利用方法や互換性などについてはこちらからご確認ください。

※ここでいうタッチ決済は、クレジットカード決済とスマートフォン決済のみとなります。電子マネー決済には対応していません。

導入のステップも簡単。まずは無料アカウントを作成しましょう。必要事項の入力を終えると、加盟店審査に進みます。審査の結果は最短即日で登録したメールアドレスに通知されます。

審査の通過が確認できたら、決済端末(※)を手に入れましょう。Square リーダーとSquare ターミナルはSquare ショップから手に入れることができ、通常、一週間以内でお手元に届きます。また、家電量販店からでも購入できます。取扱店舗はこちらからご確認ください。

※Tap to Pay on Androidを利用する場合は、決済端末は必要ありません。お手持ちのAndroidのスマートフォンで利用することができます。

jp-blog-steps-to-start-include-qr

Squareの決済端末を使い始めるうえで役立つ記事を以下にいくつか紹介します。ぜひご参考ください:

Squareのタッチ決済にかかる手数料

キャッシュレス決済端末を導入するうえで、決済手数料は気になるところでしょう。

Squareの決済手数料は業種やビジネスの規模によって変わることはありません。決済手数料は以下の通りです。

jp-blog-jcb-rate-change

振込口座に三井住友銀行、あるいはみずほ銀行の口座を指定すれば、決済手数料を除いた売上額が最短翌営業日に振り込まれます。そのほかの金融機関でも、毎週金曜日に売上額が振り込まれます。入金サイクルについて詳しくはこちらからご確認ください。

接触機会を減らし、決済にかかる時間を短縮できるタッチ決済。日本ではまだ目新しい決済方法ではありますが、衛生面を考慮した決済方法が注目を集めるなか、利用者は着々と増えていくことが予想されます。これからキャッシュレス決済に対応する場合、またはキャッシュレス決済端末の買い替えを検討している場合には、タッチ決済にも対応した決済端末の導入を検討してみてはいかがでしょうか。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2021年4月26日時点の情報を参照しています。2023年9月6日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
Photography provided by, Unsplash