個人事業主でも法人でも、利益を生み出していくうえで避けられないのが税金です。税金を納めるうえで押さえておかなければいけないものといえば、申告時期と申告内容です。期限内に申告をしていなかったり、過少申告をしていたりなど、場合によっては加算税が課されてしまいます。中でも、意図的に実際の納税額よりも少ない額を申告する、事実の隠蔽・仮装を図った際に課されてしまうのが、「重加算税」です。
今回は加算税のなかでもっとも加算の割合が高い「重加算税」の算出方法から、重加算税の対象となる隠蔽や仮装に該当する行為、不服を申し立てる方法などを紹介します。
目次
「重加算税」が課される場面とは
納税額を決定するうえで、個人事業主であれば1月1日から12月31日の1年間を通して得た所得を確定申告を行います。法人であれば税金の種類ごとに定められた期限内に申告と納税を行わなければいけません。
その際に気をつけなければいけないのは(1)期限を過ぎてからの申告や納付、(2)期限内の提出における申告内容のミスです。いずれかに該当した場合は、下記の加算税が課されます。
過少申告加算税 | 無申告加算税 | 不納付加算税 |
---|---|---|
申告期限内に提出している納税額が過少である場合 (=新たに収める税金に10%を乗じた金額、ただし、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) |
期限内に確定申告をしなかった場合 (=新たに収める税金に15%を乗じた金額、ただしそれが50万円を超える場合は20%) |
源泉所得税の納付期限を過ぎてしまった場合 (=納付すべき額に10%を乗じた金額) |
上記の対象であるうえ、理由として隠蔽または仮装の行為が確認できた場合に、代えて課されるのが重加算税です。隠蔽または仮装の判断基準は、それらに認められる行為の有無、とされています。該当する行為は、この後詳しく説明します。
参考:法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)(国税庁)
加算税については、こちらも参考にしてみてください。
重加算税の計算方法
重加算税は、増差額(本来納めるべきだった税額 - 当初申告していた税額)を基に計算され、加算の割合は前述の3つの加算税のうち、どれに当てはまるかにより異なります。
過少申告加算税、または不納付加算税に代えて重加算税を徴収される場合は増差額×35%、無申告加算税に代えて徴収される場合は増差額×40%とされています。
過少申告を例に挙げると、
増差額 | 重加算税 | 新たに納めなければいけない税額 |
---|---|---|
700万円(本来払うべきであった税額) - 200万円(当初申告した税金)= 500万円 | 500万円(増差額)×35%= 175万円 | 500万円(増差額)+175万円(重加算税)= 675万円 |
となります。
さらに2017年には、短期間で隠蔽や仮装の行為を繰り返すと、加算税が加重される制度が導入されました。
仕組みとして、期限後申告があった日の前日から起算して過去5年以内に無申告加算税、または重加算税を課されていた場合、新たに納めなければいけない税額に合わせて、増差額の10%が上乗せされます。つまり前述の計算法で35%に当てはまる場合は45%に上がり、40%に当てはまる場合は50%に上がります。
注意したいのは、過去に無申告加算税を課された場合も、加重措置の対象になる点です。
知ることで防止。重加算税に該当する行為・しない行為とは
前述の通り、重加算税が課されるのは、隠蔽、または仮装の行為があるとみなされた場合です。うっかりミスをしたばかりに重加算税を課されてしまわないよう、あらかじめ重加算税の対象とされる行為を把握しておくと安心でしょう。
隠蔽、仮装とみなされる主な行為を国税庁のホームページから抜粋して、下記に記します。
1, いわゆる二重帳簿を作成している
2, 帳簿書類をはじめとする決算に関係のある書類を破棄または改ざん、隠匿している
3, 税額控除に必要とされる証明書やその他の書類を改ざんしている、取引先と通謀して契約書を偽造している
4, 簿外資産(確定した決算が記された帳簿に資産勘定に計上されていない資産)に係る利息収入、賃貸料収入等の収益を計上していない
5, 簿外資金(確定した決算が記された帳簿に計上していない収入金、または当該帳簿に費用を過大もしくは架空に計上することで当該帳簿から除外した資金)で賞与やその他の費用を支出している
6, 同族会社であるにもかかわらず、その判断材料である株主等の所有株式等を架空の人、または単なる名義人に分割するなどし、非同族会社としている
たとえば売り上げが書かれた書類を破棄する行為や、収支内訳書に根拠のない経費や収入を記す行為も上記に当てはまります。
一方で、隠蔽や仮装に該当しない行為も、国税庁のホームページの情報を基に、下記に記します。
1, 売り上げを繰り延べているが、翌事業年度の収益として計上している
2, 経費を繰り延べているが、繰り上げ計上を翌事業年度の支出としている
3, 棚卸資産が災害により陳腐するなど、認可された理由を基に評価換えし、過少評価をしている
4, 確定した決算を記した帳簿で、交際費や寄付金のように損金算入に制限がある費用を他の費用科目に計上している
このように費用が繰り延べられている場合でも、理由によっては隠蔽や仮装とみなされないこともあるようです。
隠蔽や仮装行為に「意図がない」とされた詳しい事例は国税不服審判所のウェブサイトにも掲載されています。
税務調査に指摘を受けたときの対処法
納税者が正しく納税をしているかを確認する税務調査。法人が受ける印象があるものの、個人事業主も対象のうちです。申告に何かしらの漏れがあれば、追徴課税を課されることもなきにしもあらずです。ただし、処分に納得のいかない場合、不服を申し立てる手段が二つあります。
・再調査の請求
・審査請求
いずれにしても、処分の通知を受け取った3カ月以内に書類を作成し、提出する必要があります。再調査の請求書は国税庁のホームページから、審査請求書は国税不服審判所のホームページからPDFでダウンロードすることができます。
参考:[手続名]税務署長又は国税局長が行った更正や決定、滞納処分などに不服があるときの再調査の請求手続
二つの手続きの大きな違いは、不服の申し立て先です。再調査の請求の場合は、処分を受けた税務署の税務署長、または国税局長に見直しを依頼します。一方、審査請求の場合は国税不服審判所に処分の見直しを求めることができます。
2018年度に国税庁が発表した調査によると、再調査の請求は過去3年でもっとも高く2,043件(前年度と比べて12.6%増)、審査請求は6年振りに3,000件を越え、合計で3,104件という結果が出ています。しかしながら同調査によると、不服が容認される割合は前者で12.3%、後者で7.4%と厳しいようです。
参考:
・平成30年度における再調査の請求の概要(国税庁)
・平成30年度における審査請求の概要(国税庁)
申告内容にミスなどがないよう抜け漏れなく管理しておきたいのが、帳簿です。最近ではパソコンのブラウザから簡単に帳簿の管理ができるクラウド会計アプリもたくさん登場しているので、こういったツールを活用するのも一つの手でしょう。くれぐれも重加算税を課されてしまわないよう、確定申告は慎重に行いましょう。
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執筆は2019年8月13日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash