コロナ禍で落ち込んでいたインバウンド消費が回復の兆しを見せている。2023年5月には水際対策が終了することから、コロナ前と同程度、もしくはそれを上回る数の観光客が日本を訪れる日もそう遠くはないだろう。観光客の復活を今か今かと待ちわびたビジネスオーナーも多いはずだ。さらに一歩進んで、“一見さん”になりがちな外国人観光客をリピーターに変えることができれば経営の安定にもつながる。

地道な工夫を積み重ねることで海外にファンの輪を広げている海苔専門店が、東京都台東区・かっぱ橋にある。今回は「ぬま田海苔」の4代目当主である沼田晶一朗さんに、観光客をリピーターに変える工夫と、Squareが役に立っている点について伺った。

業種 食品小売業
業態 海苔専門店
利用しているサービス Square スタンドSquare 請求書
導入を検討した理由 ・以前使用していた決済端末は入金が遅く、キャッシュフローが滞ることが懸念点だった
・海外発送に向けて簡単な決済方法を探していた
Squareが役に立っている点 ・Square 請求書で海外からの注文にも応えることができた
・入金スピードが早くなったことで、キャッシュフローが改善された
・洗練された店舗デザインに合った決済端末を導入できた

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浅草と上野のちょうど中間に位置するかっぱ橋には、平日でも朝から観光客の姿が絶えない。食に関連する専門店が軒を連ねる街に店を構え、シェフや料理研究家といった食通から、ふらりと通りかかった観光客まで、多くの人の心をつかんでいるのがぬま田海苔だ。

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オンラインで売れないと厳しい時代

ぬま田海苔が道具街として知られるかっぱ橋にお店を開いたのは2018年のこと。それ以前は、母の孝枝さんが川崎で受注から発送まで1人で商売の切り盛りをしていた。高齢の母を心配し、きょうだいで今後のことを話し合った際、事業をたたむという選択肢も出たという。しかし、仕事を生き甲斐にしてきた母を見て「リブランディングをして、お母さんが楽しく仕事ができる場所を作ろう」と決めた。

大手アパレル店で働いていた沼田さんが仕事を辞め、家業を継ぐことにした。長年小売業に携わっていた経験から、オンラインで売れないと厳しい時代だと分かっていた。お客様をオンラインに誘導できるような場を構えようと、国内外から人が集まるかっぱ橋を選んだ。

「浅草は人が多いですが、観光をする場所という印象が強いです。一方で、かっぱ橋は買い物をする場所です。道具のストーリー性を知りたくてわざわざ足を運ぶ人が多い。食べ物が好きな人が多いなら、チャンスはあると思いました」

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味には自信がある、あとは認知だけ

パンフレットは日本語と英語の両方を揃え、お店の前で立ち止まった人には「パンフレットだけでもどうぞ」と積極的に話しかける。

「お客様は待っていても入ってきませんから。海苔のクオリティーには自信があります。うちに足りないのは認知だけです」

ぬま田海苔が扱うのは有明海で収穫された「初摘み」のみ。かつ、そのなかでも◯や重などの等級で2等以上の海苔だけだ(※)。市場に出回る商品の1%にも満たない希少な海苔が並ぶ。山と海の恵みがギュッと詰まった海苔の美味しさは、それまで海苔に興味がなかった人を開眼させるほどだという。

※◯は小穴が空いている海苔、重(じゅう)は重みがあるしっかりとした海苔

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アパレルから海苔店というキャリアチェンジに大きな戸惑いはなかったのだろうか。そう聞かれることも多いが、沼田さんは「価値を見つけ、それをどう伝えるかは、食べ物も洋服も変わらないです」と話す。

たとえば、海苔だけだと“映えない”。ならばと、おにぎりと組み合わせたビジュアルを作成した。さらにバリエーションを増やすべく、チーズと海苔のペアリングを提案すると、ある日イタリア人のお客様が「青混ぜ海苔がゴルゴンゾーラチーズにすごく合ったよ」と教えてくれた。こうしたお客様の言葉をヒントに、海外のお客様にもより具体的な提案ができるようになっていった。

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売上の3割が訪日観光客

地道なアプローチのおかげで、海外のお客様が売り上げの3割を占めるようになった。台湾や香港など、海苔を食べ慣れている国の観光客が「日本で良い海苔を買いたい」とやってくることもあれば、フードブロガーやシェフが立ち寄ることもある。

欧州からのお客様のなかには、海苔に馴染みのない人も多い。そういうときに役立つのが、ペアリングの提案だ。チーズやバター、ワインにも合うことを伝え、相手の好奇心を引き立てる。なかには「こんな食べ方をしたよ」と写真を送ってくれるお客様もいる。

海外発送にはSquare 請求書

たびたび自国まで送ってほしいというリクエストを受けることがあったが、手間ひまを考えて断っていた。

そんな沼田さんの考えを変えたのが、コロナ禍だった。ぬま田海苔のSNSには「去年お店に行きました。また買いたいので発送してくれませんか」とさまざまな国からのメッセージが次々と届いた。要望に応えたいと、海外発送に踏み切った。

ただ、ぬま田海苔にはまだ海外からの注文に対応できるECサイトがない。簡単に注文受付から決済までできる方法がないかと考えていたときに、Square 請求書を使ったらどうかと提案したのは、弟の雄二朗さんだった。違う業界にいるものの、テック系に強い雄二朗さんとはよく意見交換をするという。

請求書の作成にかかるのは5分

ぬま田海苔ではSquareの決済端末を導入していたこともあり、Square 請求書の利用は簡単だった。Squareの管理画面にログインし、商品名や送料などよく使う項目を英語で登録しておけば、請求書作成時には該当する項目を選ぶだけだ。沼田さんは1通の請求書を作るのに5分もあれば十分だと話す。

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▲Square 請求書の作成画面(件名、メッセージ、支払い期限などを設定できる)

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▲Square 請求書の作成画面(事前に登録した商品や送料を選び、数量を設定すると合計金額が算出される)

チャットやInstagramのDM経由でお客様からの注文が入ると、欲しい商品や量、予算、発送方法の希望を聞く。何回かメールなどでやり取りをして、注文内容が固まったらSquare 請求書を送る。

「こういう内容で大丈夫ですかと確認したら、請求書をメールで送りますねと伝えます。みなさん本当に早いですね。Squareのメール決済への信頼があるからか、請求書を送ってから2日以内に絶対に払ってくれます」

決済が完了すると、お客様と沼田さんの両方に支払確定メールが送られる。支払いが確認できれば、商品を発送する。

やり取りは英語になるし、DHL(国際宅配便)や日本郵便など発送方法も一つではない。国内のお客様よりも手間は少し増える。しかし、沼田さんは「誰だってできます」と断言する。英語は自動翻訳があるし、支払いにはSquare 請求書がある。最初の「めんどうだな」という気持ちを乗り越えるだけだ。

「1回やってみればいいのになって思います。まずはSquare 請求書を使って海外からの注文をとってみることで、海外向けのECサイトが必要かどうかの判断材料にもなります」

海苔自体が軽いので配送費用はあまりかからない。たとえば、1万円分の商品を送る場合、台湾までの配送費用が2,500円、米国が4,500円ほどである(※)。賞味期限が長いから数カ月かかる船便でも大丈夫だ。海外発送をやってみたことで、海外発送に向いた商品だと気付いた。

※日本郵政のEMS(国際スピード郵便)を利用した場合の料金。また、EMSの場合、台湾は中3日、米国は中4日〜1週間程度で到着する。

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海外注文の95%がリピーター

海外発送に対応したことで、単発のお客様をリピーターに変えることができた。海外から入る注文の95%がリピーターだ。わざわざ発送してもらうくらいなので、1回の注文単価もけして安くない。個人のお客様で1万円前後、レストランからは10万円以上の大口注文が入ることもある。

リピーターを増やす工夫として、Instagramをフォローしてくれたお客様には小さな試食用パックをプレゼントしている。「海外発送できますよ」と、メールアドレスを記載したショップカードも必ず渡す。一度来てくれたお客様とつながりを作ることを意識している。

「『海苔が売れてよかったな』だと単発で終わってしまいます。どうやったらリピートしてくれるのかって考えたら、Instagramをフォローしてもらったほうが絶対いいです。『日本で食べたあの海苔、どこのお店だっけ』と思ったときに、InstagramをフォローしていればDMが送れます」

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キャッシュレスが7割

時を少しさかのぼって、Squareを導入したきっかけを聞いてみた。開店当初は他社の決済端末を使っていた。しかし、入金まで長いときには2カ月かかることもあった。キャッシュフローをもっと円滑にしたいと思ったときに、Squareを勧めてくれたのが前出の雄二朗さんだ。

「2カ月売り上げが入ってこないのは、個人商店にとっては相当苦しいですね。キャッシュフローが早いことで、違うものを仕入れて売ることができますし、機会ロスをせずに済みます」

コロナの影響もあって、キャッシュレス決済を使うお客様が増えた。今ではキャッシュレス決済が7割を占める。

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お客様をもてなすのが大好きで、海苔を褒められると嬉しくなってついついおまけをしてしまうという孝枝さんは、今でも週に5日はお店に立ち、品出しをしたり、試食を勧めたりと忙しい。もちろん、レジを打つこともある。iPadと組み合わせて使えるSquare スタンドなら画面のサイズが大きく、操作に迷うこともないという。

Squareのことを書いたnoteは4万PV超え

お客様との関係性作りは店舗だけに留まらない。noteなどでの発信にも力を入れている。型にはまらない発信内容が、メディア取材につながるケースも多々ある。

たとえば、2021年2月に公開した「海苔屋が越境ECのテストを”Square”(スクエア)でやってみた話。」では、Square 請求書の使い方を含め、海外発送の方法を丁寧に説明している。PV数は4万を超え、沼田さんが書いた記事の中では驚異的に読まれているという。

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他にも「母がメガネを買いかえたかった、本当の理由とは。」「ヴィーガンで補うことが難しいと言われている《ビタミンB12》が海苔で摂取できるのか?調べてみた。」など、思わずクリックしてしまう記事が多い。

記事のダブルチェックを外部の人に依頼することもあるが、基本的には沼田さんが一人でネタを考え、執筆している。日常業務だけでもやることが多いはずだ。なぜ、ここまで発信に取り組むのだろうか。その理由はやはり“認知”にあるようだ。

「入り口を色んなところに開けておきたいんですね。色んな角度の記事があったほうが、色んな人が入ってきてくれます。自分がためになったことは、他の人のためにもなりますし。

たとえば、海苔って夏の間は牡蠣の殻のなかで成長しています。生物ってどこかしら何かと共存していると思うんです。今は競争の時代と言われていますが、競争より共存というテーマでやっていったほうが、いろんなものが入ってくるし、いろんなものを与えられると思います」

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「Square 請求書を使って海外からの注文をとってみることで、海外向けのECサイトが必要かどうかの判断材料にもなります」ーぬま田海苔 4代目当主 沼田晶一朗さん

Squareで実現したこと

海外からの注文にも対応できた

コロナ禍を機に海外発送を始めたぬま田海苔では、「Square 請求書」を使うことで決済フローをシンプルにできました。お客様のメールアドレス宛に注文内容と配送費用を記載した請求書を送れば、お客様はメールの画面からそのままクレジットカード決済ができます。Square 請求書は無料の機能(※)で、コストとしてかかるのは決済手数料だけです。

※一部の機能は有料です。Square 請求書の決済手数料は、3.25%(自動継続課金は3.75%)です。利用できるカードブランドは、Visa、Mastercard、American Express、JCB、Diners Club、Discoverです。詳しくはこちらからご確認ください。
※海外のお客様へのSquare 請求書の送り方はこちらを参考にしてください。

リピーターの確保につながった

海外からの観光客は「1回きりのお客様」になりがちです。ぬま田海苔では、海外からの注文にSquare 請求書を利用することで、1回きりのお客様のリピート化に成功しています。多い人では10回以上リピート注文をするお客様もおり、年に2回から3回購入するお客様も増えてると沼田さんは話します。

キャッシュフローが改善された

ぬま田海苔では、Square スタンドを使った対面決済とSquare 請求書を使ったオンライン決済を利用しています。対面でもオンラインでも、売り上げは最短で翌営業日に振り込まれます(※)。キャッシュレス決済比率が増えても、キャッシュフローの悪化を心配する必要はありません。

※三井住友銀行・みずほ銀行をご登録の場合は、0:00 から23:59 までの決済分が決済日の翌営業日に振り込まれます。三井住友銀行とみずほ銀行以外の金融機関口座をご登録の場合は、毎週水曜日で締め、同じ週の金曜日に合算で振り込まれます。

店舗のデザインに合う決済端末が導入できた

ギャラリーと勘違いして入店するお客様もいるほど、ぬま田海苔の店舗デザインは洗練されています。そんな店舗のデザインに合う決済端末として選んだのが、Square スタンドです。商品を際立たせつつ、シンプルで使いやすい決済端末が導入できました。

この事例に登場したSquareのサービスは:

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