コロナ禍をきっかけに、さまざまなことがオンラインで行われるようになりました。買い物に会議、面接……接客もその一つでしょう。「オンライン接客」という言葉を聞く機会も増えたかもしれません。この記事ではオンライン接客の概念、導入するうえでの利点や注意点、向いている業種や導入時のポイントなどを説明します。
目次
- オンライン接客とは
・オンライン接客はどんなビジネスに向いている?
・オンライン接客の流れ
・オンライン接客が注目される理由 - オンライン接客のメリット
・ネットショップの離脱を売り上げに変えられる
・購入単価が上がる
・商圏が全国に広がる
・リピート率の向上が望める - オンライン接客のデメリット
・お客様の満足度を下げる恐れがある
・ある程度の研修が必要
・お客様が利用前に挫折してしまう可能性も - オンライン接客を導入するときのポイント
・必要なものを把握しよう
・対応体制を整えよう
・テストを重ねよう
・トラブル時の対応方法を練っておこう
オンライン接客とは
オンライン接客とは、インターネット上でお客様にサービスやおもてなしを提供することを指します。インターネット上と聞くと「メールでの問い合わせ」を想起する人もいるかもしれませんが、オンライン接客はどちらかといえばリアルタイムでの接客を指すことが多いようです。基本的にはネットショップや公式サイトなどに窓口を設置し、お客様が利用手順に沿って進むと店舗の従業員などから接客が受けられます。
オンライン接客の例には以下の方法がよく挙げられます。
- 【チャット型】チャットを介してお客様の不明点を解消
- 【ビデオ型】オンライン通話を介してお客様の不明点を解消
ほかにも、ユーザーの行動をもとに適切な声かけを行う「ポップアップ」や、Instagramなどのライブ配信で商品を紹介する「ライブコマース」もオンライン接客に分類されることがあります。
この記事では「リアルタイムでコミュニケーションが取れる」「お客様から求められたときに対応する」の二点に重きを置き、上記のチャット型・ビデオ型に絞って説明していきます。
オンライン接客はどんなビジネスに向いている?
どのような業種にオンライン接客が使われているのでしょうか。ライフネット生命保険株式会社が2020年に行った調査があります。15歳から60歳以上の計1,102名に「オンライン接客を受けたことがある商品・サービスは?」と尋ねたところ、以下の回答が集まりました。
動画でオンライン接客を受けたサービス | チャットでオンライン接客を受けたサービス | |
1位 | 不動産(戸建て・マンション) | アパレル |
2位 | 飲食店、グルメ | ブランド品(時計、バッグ、ジュエリーなど) |
3位 | ブランド品(時計、バッグ、ジュエリーなど) | 不動産(戸建て・マンション) |
4位 | 賃貸住宅 | 家電 |
5位 | アパレル | 携帯電話、スマートフォン |
6位 | 住宅設備、ショールーム | 食品・グルメ |
7位 | インターネット回線・Wifi | 住宅設備 |
8位 | 化粧品、美容 | 賃貸住宅 |
9位 | 携帯電話、スマートフォン | 化粧品・美容 |
10位 | 英会話 | インターネット回線・Wifi |
参考:ライフネット生命保険 オンライン接客に関する調査を公開(2020年11月25日、ライフネット生命保険株式会社)
なかでも「アパレル」分野ではオンライン接客を積極的に活用しており、もしかしたら利用経験がある人もいるかもしれません。
たとえば商品のサイズ感を確かめたいという人から、人気店員にクローゼットの中身を見てもらいながらコーディネートしやすい商品を提案してもらいたいなど、要望の幅は広いようです。
オンライン接客の流れ
オンライン接客の流れはビジネスごとに異なりますが、一般的には以下のような流れになっています。
■チャット型の場合……
指定のプラットフォームを介して、お客様が店舗の従業員、またはAIなどに質問を投げかける。数秒、あるいは数分後に従業員から返事が来て、不明点の解消にあたる。
■ビデオ型の場合……
<即時対応>
ネットショップや公式サイトなどを通してオンライン接客が可能な店舗を検索。店舗が指定する方法で通話を開始する。
<予約制>
お客様はネットショップや公式サイトにある予約フォームを通して希望日時を指定し、オンライン接客の予約を入れる。店舗側は、事前に受け付けた情報をもとに提案内容をまとめておく。お客様は時間になったらURLにアクセスし、従業員から一対一で接客を受ける(30分から40分ほどが一般的)。
ビデオ型には即時対応と予約制がありますが、人員を用意できる場合には「即時対応」を、そうでない場合には「予約制」を採用することが多いようです。チャット型の場合は、迅速な対応が求められるでしょう。
オンライン接客が注目される理由
コロナ禍の影響で、店舗に足を運ぶ代わりにネットショップを利用する人が増えました。
総務省が発表しているネットショッピングの支出金額を見てみると、感染症拡大前の2019年と拡大後2021年では月平均額が30%も増えていることがわかります。
2019年 | 2021年 | |
ネットショッピング支出金額(月平均) | 14,332円 | 18,727円 |
参考:
・2020年家計消費状況調査結果の概況(経済産業省)
・2021年家計消費状況調査結果の概況(経済産業省)
実店舗にあってネットショップにないことといえば、店員の存在です。気になることが聞けないことで購入を諦めてしまったり先延ばしにしてしまったりする潜在顧客もいるのではないかという課題から、「オンライン接客を導入して、お客様の不明点を解消する」という動きがさまざまなビジネスで見られるようになりました。
感染症が落ち着いたらオンライン接客のニーズは徐々に減っていくのではないかと思う人もいるかもしれません。しかし後述のメリットでも詳しく説明するように、オンライン接客は売上拡大につながる可能性を秘めていることから、継続して取り入れていきたいと考えるビジネスも少なくないようです。
お客様側も、オンライン接客に慣れ親しみ、好んで利用したい人も少なくないようです。先述のライフネット生命保険株式会社の調査では、「オンライン接客を利用したきっかけ」として外出自粛で店舗に行けなかったことももちろん挙げられていましたが、それ以上に「家でも接客を受けられるのが便利だから」「電話や対面よりもオンラインの方が気軽に相談しやすいから」といった点に票が集まっていました。お客様と店舗の双方にメリットがあることから、オンライン接客を導入するビジネスはこれからも増えることが予想されます。
参考:ライフネット生命保険 オンライン接客に関する調査を公開(2020年11月25日、ライフネット生命保険株式会社)
参考までに、株式会社MS&Consultingが行った調査により明らかになった「オンライン接客に満足した理由」も以下に記載します。
- 移動時間の短縮ができるから
- 自宅でサービスを受けられる気軽さがあるから
- 感染症に対する安心感があるから
- オンラインでも実店舗に劣らない良いサービスが受けられたから
参考:オンライン接客の利用実態調査【2022年3月】(2022年4月5日、MS&Consulting)
オンライン接客のメリット
ここではオンライン接客を取り入れるメリットを見ていきましょう。
ネットショップの離脱を売り上げに変えられる
欲しい商品が決まっている場合、お客様はオンラインでもスムーズに購入画面まで進めるでしょう。しかし、「キャンピング用のテントが欲しい」といったざっくりした要望で品揃えが豊富なネットショップにアクセスしてしまうと、「初心者には一体どんなテントがいいんだ……」と途方に暮れ、選べずにネットショップを離脱してしまうかもしれません。
欲しいものがあるにも関わらず、不安や困りごとが理由で購入に進めずネットショップを離れてしまうのは、ビジネスにとって立派な機会損失だといえるでしょう。
このような状況を回避するのがオンライン接客の役目です。お客様の購買行動を妨げる要因を聞き出し、最適な回答を提案することで、購入へと促す動線を引くことができます。
人気ファッションブランドの「MOUSSY(マウジー)」や「SLY(スライ)」を抱える株式会社バロックジャパンリミテッドは、SNSを通じたオンライン接客やライブコマースを取り入れたところ、ECの売上高が前年同期比で10.6%も増えたそうで、オンライン接客が売上拡大において効果を発揮していることが伺えます。
参考:接客日本一の超人気スタッフが伝授 “売れる”オンライン接客(2022年05月18日、日経クロストレンド)
購入単価が上がる
潜在顧客の離脱を回避できることに加えて、購入単価を上げられることもオンライン接客に期待できる効果の一つです。
たとえばどのようなシーンで商品を使用したいかなどをヒアリングすることで、持ち合わせておくと便利なアイテムを自然な流れで紹介し、まとめ購入につなげることができるでしょう。また会話のなかで当初予定していた商品では要望を満たせず、よりスペックの高いものが必要だと分かり、自然な流れで購入単価が高い商品をおすすめすることもあります。
カスタマイズ可能なノートパソコンを販売しているパナソニックコンシューマーマーケティング株式会社では、お客様のニーズをヒアリングしながら商品を提案していったところ、ネットショップでの直接販売と比べて購入単価を10%以上高めることができたそうです。
参考:オンライン接客で購入率50%、客単価1割増を実現。 高い接客力をオンラインで活かす。(スピンシェル株式会社)
お客様のニーズにぴたりと合う提案ができると、より単価の高い商品を購入してもらえる可能性が高まるでしょう。
商圏が全国に広がる
オンライン接客の強みは、店舗を訪れることが難しい層にも店舗と変わらないクオリティーの接客を提供できるところです。売上拡大を狙ううえでも実店舗だけにこだわらず、オンラインで全国に商圏を広げていきたいところです。
オンライン接客アプリを自社開発した三越伊勢丹ホールディングスでは、オンライン接客を受けて商品を購入した顧客の約半数が首都圏以外のお客様だったそうで、需要があることが伺えます。
参考:三越伊勢丹がオンライン接客で販路獲得に成功した「緻密な仕掛け」と利用客数10倍の道筋とは?(2021年5月7日、株式会社ダイヤモンド・リテールメディア)
リピート率の向上が望める
オンライン接客でお客様を満足させることができれば、「また利用したい」と思ってもらえる可能性も高まるでしょう。そのためにも、オンライン接客を「商品・ブランドの良さに触れてもらい、お客様の心を掴む勝負の場」と考えて挑むことが大切です。
オンライン接客のデメリット
次に、オンライン接客のデメリットを見ていきましょう。
お客様の満足度を下げる恐れがある
通信環境が悪くお客様の質問を何度も聞き返したり、回線が混雑していつまで経っても従業員と話せなかったりすると、お客様に不快な思いをさせてしまううえ、店舗の印象も悪くなる可能性があります。対策としては、以下のようなことができます。
- 回線の混雑状況をネットショップやSNSなどでお知らせする
- 通信状況が悪い場合の対応方法を従業員にあらかじめ共有する
いずれにしても、オンライン接客がお客様の満足度低下につながらないように対策を用意しておくことが大切です。
ある程度の研修が必要
導入したはいいがうまく使いこなせず、挙げ句の果てにはお客様に迷惑をかけしまった……といった最悪の事態が発生しないよう、研修の時間をある程度確保しておく必要があります。研修に多くの時間をかけないためにも、従業員にはもちろん、お客様にとっても使いやすいツールかどうかは導入時に重視したいポイントです。
お客様が利用前に挫折してしまう可能性も
お客様の困りごとを解消するためにと導入したはいいものの、利用手順がややこしいと、なかなかお客様の利用につながらないかもしれません。お客様が挫折してしまわないためにも、利用手順はなるべくシンプルでわかりやすく記載しておくことが大切です。まずは他社のオンライン接客のページなどを参考にしてみるといいでしょう。
- アウトドアブランド「スノーピーク」のオンライン接客ページ
- スポーツウェアブランド「ゴールドウィン」のオンライン接客ページ
- オーガニックタオル「IKEUCHI ORGANIC」のオンライン接客ページ
オンライン接客を導入するときのポイント
実店舗だけではリーチできなかった層にも働きかけができるオンライン接客ですが、失敗に終わらないためにもまずは以下の準備が必要なことを念頭に置いておきましょう。
必要なものを把握しよう
オンライン接客をはじめるには大まかに以下のようなものが必要になります。
- ウェブ会議システム(Zoomなど)
- 通話用のiPadやパソコン
- マイク・カメラ
- ネットショップ・ウェブサイト(Squareなど)
- ネット予約システム
- オンライン接客用チャットツール(LINE WORKSなど)
ビデオ型の接客を提供する場合、用意するものが多くなるかもしれません。チャット型の場合、チャットツールはさまざまな企業から提供されているため、コストや必要な機能などを明確にしながら、自社に適したツールを絞っていきましょう。
オンライン接客への誘導ページは基本的にネットショップや公式サイトに設けておくことが一般的です。
まだネットショップの用意がない場合におすすめなのは、無料でウェブサイト・ネットショップが作成できるSquareです。商品をネット販売できるのはもちろん、予約ページを作成することもできるのでオンライン接客の予約もスムーズに受け付けることができます。
▶︎Squareで作成したネットショップに予約ページを作成する方法はこちら
▶︎Squareの予約機能について詳しくはこちら
ネットショップを作るには、テキストを打ち込んだり画像を追加したりして編集していくので、コーディングなどの専門知識がなくても簡単に作ることができます。ビデオ通話の申込フォームも、チャットができるプラットフォームへの誘導リンクも、数分あれば追加することができるでしょう。商品の販売機能や予約ページの作成機能は、アカウントさえ作成すれば無料プランから利用することができます。
オンライン接客を導入している店舗の例として、Squareのネットショップを利用しているSankaku Standがあります。緊急事態宣言中に限定した取り組みですが、参考にしてみるといいかもしれません。
▶︎Sankaku StandがSquareのネットショップを導入して感じたこととは?導入事例を読む
対応体制を整えよう
オンライン接客は、チャットやビデオツールを導入すればすぐに始められるわけではありません。
お客様は即時対応と予約制のどちらを好むのか、チャット型・ビデオ型のどちらがいいか、事前にお客様に送付してもらいたい情報はあるか、ヒアリングしたデータはどのように蓄積していくのか、アフターフォローはいつ・どのように行うべきか。
このようなことをまずは明確にし、場合によってはどの従業員でも対応できるように簡単なマニュアルなどを作る必要も出てくるかもしれません。
また、問い合わせが来たらすぐに対応をする即時対応のオンライン接客を行うのであれば、当然ながらそのような体制を整える必要も出てくるでしょう。「不明点に店舗のスタッフがすぐにお答えします」などと謳っていれば、お客様も迅速な対応を期待するため、いつ問い合わせが来てもすぐに対応できるような人員配置を考える必要があります。
テストを重ねよう
特にビデオ型のオンライン接客を行う場合には、照明などの影響で商品の色味が画面上だと少し違うように映ってしまう恐れもあるでしょう。お客様の手元に届いたときに「オンライン接客で見たときと少し違う……」と感じてしまえば商品が返品されてしまったり、リピートにつながらなかったりといったことが起こりえます。お客様の信頼を失わないためにも、見切り発車はせず、何度かテストを重ね、商品の写り方に支障がないかは検証しておきましょう。
トラブル時の対応方法を練っておこう
前章でも触れたように、通信トラブルなどが起きたときの対応方法によっては、店舗の印象を悪くしてしまう可能性もあるでしょう。たとえば通信障害が起きたときのことを考えてお客様の連絡先をあらかじめ聞いておいたり、必要に応じてクーポンを発行したりなど、できる限りの対策方法を事前に考えておくと安心かもしれません。
感染症の影響を受けて需要が高まったオンライン接客。チャットやオンライン通話でお客様の疑問や不明点を解消し、スムーズな購入の手伝いを行うことは、機会損失を防ぎ、売り上げにつなげていくうえでも効果的です。まずはどのような形で導入するのが現実的かを検討しながら、利用開始までの細かなステップを踏んでいくといいでしょう。
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執筆は2023年3月28日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
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