配偶者特別控除とは?配偶者控除との違い、要件や控除額、申請方法を徹底解説

確定申告の際、配偶者がいると配偶者控除もしくは配偶者特別控除を適用し、所得控除が認められる場合があります。給与所得のみの場合は年末調整で処理されることが多く、自力で控除額を計算し申請する機会は少ないでしょうが、個人事業主やフリーランス、複数の収入がある人などは、確定申告の中で配偶者控除もしくは配偶者特別控除を自ら適用し、控除額を自力で算出する必要があります。

本記事では、配偶者特別控除と配偶者控除の違い、配偶者(特別)控除が適用される要件、控除額、申請方法を解説するとともに、配偶者(特別)控除を受ける際に気をつけておきたいポイントについて説明します。

目次


配偶者控除・配偶者特別控除の概要

配偶者控除と配偶者特別控除は、いずれも所得控除の一種です。所得控除とは、各種所得の合計金額から、対象となる控除の種類に応じて定められた金額を差し引くもので、納税者の個人的事情を加味して所得税の負担を軽減するために設けられています。所得税は、各種所得控除を差し引いた残りの金額を基礎として算出されます。

参考:No.1100 所得控除のあらまし(国税庁)

配偶者控除とは

配偶者控除は、納税者に配偶者がいて、配偶者の年間合計所得金額が一定以下の場合に適用されます。「配偶者を養っているという個人的事情は納税の負担である」とみなされ、所得からの控除の対象となっているわけです。

以前は、配偶者の年間合計所得金額の大きさのみで配偶者控除の適用が定められていましたが、2018年度の改正以降は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額の大きさも考慮されるようになりました。このため、納税者本人と配偶者それぞれの所得金額に応じて控除額が変わります。

参考:No.1191 配偶者控除(国税庁)

配偶者特別控除とは

配偶者特別控除は、配偶者に一定の所得があるため配偶者控除の対象から外れる場合でも適用される所得控除です。これは、パートタイムなどで働く配偶者が、対象となる金額をわずかに超える所得となって納税者の控除の適用除外になったり、配偶者自身に納税の負担が増えたりして、かえって手元の金額が減ってしまう「逆転現象」が起きるケースへの対応を目的として設定されました。
このため、配偶者特別控除は、所得に応じて納税の負担が軽減できるよう、納税者本人と配偶者それぞれの所得金額に応じて、段階的に細かく控除の金額が定められています。

参考:No.1195 配偶者特別控除(国税庁)

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配偶者特別控除と配偶者控除の違い

配偶者特別控除は、配偶者控除が受けられない場合に適用されるものです。配偶者の条件によって、どちらを適用するのかが決まります。また、納税者本人と配偶者の合計所得金額の組み合わせにより、控除額が変わります。

ここからは、配偶者特別控除と配偶者控除の違いについてみていきましょう。ポイントとなるのは、「どの場合にどちらが適用されるのか」の条件と、「どのような組み合わせでいくら控除されるのか」の控除額です。

控除が適用される条件

配偶者控除は、配偶者の年間合計所得金額が48万円以下の場合で、定められた要件を満たす配偶者に適用されます。これに対し、配偶者特別控除は、配偶者の年間合計所得金額が48万円を超えて配偶者控除が適用除外になった場合に、定められた要件を満たせば適用されます。

配偶者控除と配偶者特別控除は同時に受けることができません。このため、まず配偶者控除の対象になるかを確認し、対象外であれば配偶者特別控除を適用できるかを確認することになります。
なお、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者の状況に関係なく、どちらの控除からも適用除外となります。

控除される金額

配偶者控除の場合、控除を受ける納税者本人の合計所得金額は、900万円、950万円、1,000万円を目安とする3段階に設定されています。配偶者は年齢で区切られ、一般の控除対象配偶者の場合と、老人控除対象配偶者(課税対象となる年の12月31日現在の年齢で70歳以上の配偶者)の2段階に分けられ、納税者本人と配偶者をあわせて6区分の組み合わせで控除額が定められています。

これに対し、配偶者特別控除には、老人控除対象配偶者といった年齢の枠組みはありません。その代わりに、配偶者の合計所得金額が95万円から135万円まで、5万円刻みで9段階に設定されています。控除を受ける納税者本人の合計所得金額は、配偶者控除と同じ3段階に設定されており、あわせて27の組み合わせで控除額が定められています。

なお、合計所得金額とは、事業所得や不動産所得、給与所得などの所得を原則すべて合計し、控除を適用する前の金額を指します。

参考:専門用語集「老人控除対象配偶者」(国税庁)

配偶者特別控除・配偶者控除を受けるための要件

ここからは、配偶者特別控除または配偶者控除を受けるための要件を詳しくみていきましょう。配偶者特別控除は、配偶者控除が適用除外になった場合に確認する控除のため、はじめに配偶者控除の要件から説明します。

配偶者控除を受けるための要件

当たり前のように聞こえますが、配偶者控除の対象となるには、控除を受ける納税者に配偶者がいなければなりません。ここでいう配偶者は、社会通念上のパートナーの意味ではなく、「控除対象配偶者」として厳密に定められています。国税庁のホームページでは、控除対象となる配偶者は、対象期間の年の12月31日時点で次の4つの要件すべてを満たしている必要があるとしています。

  • 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
  • 納税者と生計を一にしていること。
  • 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

引用: No.1191 配偶者控除(国税庁)

現行の所得税法上で「配偶者」が定義されているわけではないのですが、民法の規定による配偶者と同義、つまり法的に婚姻関係が認められた者であると解釈されています。社会立法上で事実婚を民法の規定による配偶者と同格に位置づけるものが多くみられるのとは対照的です。

これは、社会立法が生存権を根拠とした生活の保障を目的として発展してきたため、生活実態を重視するのに対し、租税法は、利益と直接結びつかず強制的に徴収される納税義務を定めるものであり、画一性・公平性を重視するためとされています。

もし事実婚や内縁関係のパートナーを配偶者控除の対象となる配偶者として認めようとするなら、確定申告のように全国一斉に行われる大量の申請の際に、家族というプライバシーに関わる事実認定を一つひとつ行う必要が生じてしまいます。このため、配偶者控除は、法に基づいて婚姻関係にある配偶者のみが対象となり、内縁関係にある者や事実婚の場合、12月31日までに離婚する場合は控除が適用されません。

参考:所得税法上の「配偶者」の範囲(国税庁)

控除の対象となる納税者と「生計を一にする」というのは、いわゆる「同じ財布」で生活費を出し合っている関係をいいます。このため、単身赴任などの別居状態であっても、家計が同じであれば条件を満たす可能性があります。

青色申告・白色申告の「事業専従者」は、控除対象となる納税者本人が経営する事業に従事して給与を受け取っている者を指します。事業専従者に対しては別途控除があって重複するため、配偶者控除は適用されません。

参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

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配偶者特別控除を受けるための要件

ここからは、配偶者特別控除の要件についてみていきましょう。配偶者特別控除は、配偶者控除の適用が外れる48万円を超える所得になった場合に適用されます。このため、配偶者の定義は、配偶者控除と同じ民法上の規定に基づく範囲です。その他、国税庁ホームページには、配偶者特別控除が適用される要件として、以下の事項を定めています。

  • 控除を受ける納税者本人のその年における合計所得金額が1,000万円以下であること。
  • 配偶者が、次の要件すべてに当てはまること。
    ・民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
    ・控除を受ける人と生計を一にしていること。
    ・その年に青色申告者の事業専従者としての給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。
    ・年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(平成30年分から令和元年分までは38万円を超え123万円以下、平成29年分までは38万円を超え76万円未満)であること。
  • 配偶者が、配偶者特別控除を適用していないこと。
  • 配偶者が、給与所得者の扶養控除等申告書または従たる給与についての扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)。
  • 配偶者が、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に記載された源泉控除対象配偶者がある居住者として、源泉徴収されていないこと(配偶者が年末調整や確定申告で配偶者特別控除の適用を受けなかった場合等を除きます。)。

引用:配偶者特別控除(国税庁)

配偶者控除の場合の要件からさらに、納税者本人には1,000万円以下、配偶者には133万円以下という合計所得金額の上限が定められています。また、配偶者同士でそれぞれが配偶者特別控除を適用することはできない点も追加されています。

配偶者が給与所得者や公的年金等の受給者の扶養対象となって源泉徴収されていると、配偶者特別控除を適用した場合に二重に税額が減免されたことになるため、源泉徴収されている場合は配偶者特別控除の適用外となります。

配偶者特別控除・配偶者控除の控除額

配偶者(特別)控除の控除額は、控除を受ける納税者本人と配偶者の合計所得額に応じ、段階的に金額が設定されています。

配偶者控除の控除額

配偶者控除は、納税者の合計所得金額(900万円、950万円、1,000万円の3段階)と、配偶者の対象(一般控除/老人控除)により、6段階に区分されています。配偶者が障害者の場合、配偶者控除の他に障害者控除を適用することができます。納税者の合計所得金額が1,000万円を超える場合は控除の対象となりません。

【配偶者控除の控除額】納税者本人の合計所得金額別

  • 900万円以下:一般控除38万円/老人控除48万円
  • 900万円超〜950万円以下:一般控除26万円/老人控除32万円
  • 950万円超〜1000万円以下 :一般控除13万円/老人控除16万円

配偶者特別控除の控除額

配偶者特別控除の場合、納税者本人の合計所得金額の区分は同じ3段階ですが、配偶者の合計所得金額が9段階で区切られた組み合わせで控除額が決まります。納税者の合計所得金額が1,000万円を超える場合は控除の対象となりません。

配偶者特別控除の控除額

【納税者の合計所得金額が900万円以下の場合】配偶者の合計所得金額別

  • 48万円超95万円以下:38万円
  • 95万円超100万円以下:36万円
  • 100万円超105万円以下:31万円
  • 105万円超110万円以下:26万円
  • 110万円超115万円以下:21万円
  • 115万円超120万円以下:16万円
  • 120万円超125万円以下:11万円
  • 125万円超130万円以下:6万円
  • 130万円超133万円以下:3万円

【納税者の合計所得金額が900万円超950万円以下の場合】配偶者の合計所得金額別

  • 48万円超95万円以下:26万円
  • 95万円超100万円以下:24万円
  • 100万円超105万円以下:21万円
  • 105万円超110万円以下:18万円
  • 110万円超115万円以下:14万円
  • 115万円超120万円以下:11万円
  • 120万円超125万円以下:8万円
  • 125万円超130万円以下:4万円
  • 130万円超133万円以下:2万円

【納税者の合計所得金額が950万円超1,000円以下の場合】配偶者の合計所得金額別

  • 48万円超95万円以下:13万円
  • 95万円超100万円以下:12万円
  • 100万円超105万円以下:11万円
  • 105万円超110万円以下:9万円
  • 110万円超115万円以下:7万円
  • 115万円超120万円以下:6万円
  • 120万円超125万円以下:4万円
  • 125万円超130万円以下:2万円
  • 130万円超133万円以下:1万円

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配偶者特別控除・配偶者控除の申請方法

配偶者特別控除も配偶者控除も、所得税の控除です。このため、個人事業主やフリーランス、副業収入など複数の収入のある人の場合は確定申告で、給与収入のみの人は年末調整で控除の申請を行います。年末調整での申請をしなかった給与収入の人も確定申告をすれば控除を受けることができます。

個人事業主など、確定申告で控除を行う場合

確定申告で配偶者(特別)控除を申請する場合、確定申告書第一表の「配偶者(特別)控除」欄に該当する控除額を、第二表の「配偶者や親族に関する事項」の欄に配偶者の氏名、個人番号、生年月日など必要事項を、それぞれ記入して提出します。配偶者控除も配偶者特別控除も書類は同じものを用います。また、ウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」で入力して作成することもできます。

参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)(国税庁)

給与を受け取る従業員など、年末調整で控除を行う場合

給与所得者の場合は、勤務先の会社が行う年末調整で配偶者(特別)控除を受けることができます。「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に該当する事項を記入し、その年最後に給与などの支払いを受ける日の前日までに勤務先へ提出して申請します。

配偶者(特別)控除で気をつけたい「4つの壁」

配偶者控除の合計所得金額は48万円以下、配偶者特別控除の合計所得金額は133万円以下が適用範囲です。ここでいう合計所得金額は、事業所得や給与所得など原則すべての所得を合計したもので、各種控除を差し引く前の金額のため、「結局のところいくらまでもらっていれば控除対象なのか」がわかりづらくなっています。

配偶者控除や配偶者特別控除の対象となる配偶者がパートタイムの仕事をしている場合、合計所得金額で考えるより、パート収入の金額で考えたほうがわかりやすくなります。いわゆる「○○万円の壁」と呼ばれるものです。ここからは、給与所得者の配偶者(特別)控除のボーダーラインとなる給与の収入金額についてみていきましょう。

(1) 103万円:配偶者控除適用の壁

給与所得の場合、課税される所得は、給与収入から給与所得控除と基礎控除を差し引いて求められます。給与所得控除は最低で55万円、基礎控除は一律48万円で、合計した103万円が非課税限度額となります。給与収入が103万円まででそれ以外に所得がなければ、所得税がかかりません。

なお、所得税とは別に、自治体が課税する住民税があります。住民税のうち所得割の非課税限度額は45万円のため、給与収入が100万円以下であれば住民税の所得割も非課税になります。ただし、住民税の均等割の課税については自治体により異なるため、居住する自治体へ確認が必要です。

(2) 150万円:配偶者特別控除の満額適用の壁

給与収入が103万円を超えると、配偶者控除の対象から外れ、配偶者特別控除の枠内で控除額が決まります。配偶者特別控除の最大の控除額38万円(納税者本人の合計所得金額が900万円以下の場合)を受けようとすると、給与収入に換算した場合は150万円以下がボーダーラインとなります。

(3) 201万円:配偶者特別控除適用の壁

配偶者特別控除は、配偶者の所得額に応じて徐々に控除額が減ります。給与収入が201万円を超えると控除額がゼロとなり、配偶者特別控除が受けられなくなります。つまり、給与収入が201万円を超えるかどうかは、配偶者特別控除の適用のボーダーラインというわけです。

(4) 1,220万円:納税者本人の控除適用の壁

ここまでは配偶者側の給与収入をみてきました。もう一つ、控除を受ける納税者本人が給与所得のみだった場合の給与収入のボーダーラインもみておきましょう。納税者の合計所得金額が給与所得のみの場合、配偶者特別控除の適用の上限(合計所得金額が1,000万円以下)の給与収入は、1,220万円以下となります。納税者の控除適用は1,220万円がボーダーラインとなるわけです。

参考:
家族と税(国税庁)
配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しに関するFAQ(国税庁)

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節税したつもりで節約にならない場合もある

ここまでは所得税の控除のボーダーラインをみてきましたが、もう一つ、公的に徴収されている社会保険についても、別の枠組みをもっています。参考までに紹介します。

(1) 106万円:社会保険の適用が開始される

給与所得が年106万円を超えると、以下の条件に当てはまる場合、厚生年金保険・健康保険に加入し、会社との労使折半で保険料を負担する必要が生じます。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2カ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

対象となる企業は、現在は従業員数が101名以上ですが、2024年10月からは51名以上まで範囲が広がる予定となっています。該当する人は注意が必要です。

参考:社会保険適用拡大特設サイト(厚生労働省)

(2) 130万円:社会保険が義務になる

上記の106万円のときの条件に当てはまらなかった場合でも、給与収入が130万円を超えると社会保険の扶養から外れ、自分自身で社会保険に加入することになります。

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配偶者控除、配偶者特別控除について、要件と控除額、申請方法などの概要とともに、控除の目安となる給与収入のボーダーラインをあわせて見てきました。個人事業主やフリーランスで配偶者がいる場合、あるいは雇用した従業員が配偶者の扶養の範囲内で勤めている場合、ここで紹介した控除額や給与収入額を参考に働き方を見直したくなるかもしれません。説明を求められたとき相談に乗れるよう、しっかり把握しておきましょう。


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執筆は2023年2月23日時点の情報を参照しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。
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