会社を立ち上げたばかりだと、従業員から源泉徴収を行った後、どのように源泉徴収税を納付するのか詳しくないオーナーの方も多いでしょう。
この記事では、源泉所得税の納付に用いる「所得税徴収高計算書」の概要と種類、源泉所得税の納期の特例、計算書の記入方法、税金の納付方法と注意点を解説します。
目次
- 所得税徴収高計算書とは?
- 所得税徴収高計算書の種類
・1.給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書
・2.報酬・料金等の所得税徴収高計算書
・3.非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書
・その他6種類 - 従業員が10人未満なら「納期の特例」が受けられる
- 所得税徴収高計算書の記入方法
- 所得税徴収高計算書の税金の納付方法と注意
- 所得税徴収高計算書の記入・納付を楽にする方法
- 所得税徴収高計算書の注意点
所得税徴収高計算書とは?
事業主は従業員に給与を支払うとき、所得税として一定の割合の金額を差し引いて徴収する必要があります。このことを源泉徴収と呼びます。
徴収した源泉所得税は、基本的には徴収した月の翌月10日までに税務署に納付しますが、このとき使用する書類が「所得税徴収高計算書」です。
所得税徴収高計算書の種類
対象となる所得ごとに所得税徴収高計算書は9種類に分かれていますが、よく使うものを中心に紹介していきます。
1.給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書
従業員に支払う給与と、弁護士・司法書士など特定の資格をもつ個人に支払う報酬から徴収した源泉所得税を納めるときに用いる書類です。後述する「納期の特例」についての承認を受けているかどうかにより、2種類に分かれています。
・一般用(納期の特例を承認されていない)
・納期特例用(納期の特例が承認されている)
2.報酬・料金等の所得税徴収高計算書
原稿料・デザイン料・翻訳料・講演料など、個人に支払う報酬や料金から徴収した源泉所得税を納めるときに用います。「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」と「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」の2種類が最も使用頻度が高いでしょう。
3.非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書
上記2つほどではありませんが、海外に住む専門家や外国法人などに報酬などを支払った際はこの書類を用います。
その他6種類
上記のほかにも次の6種類の所得税徴収高計算書があります。
1.利子等の所得税徴収高計算書
2.配当等の所得税徴収高計算書
3.定期積金の給付補てん金等の所得税徴収高計算書
4.上場株式等の源泉徴収選択口座内調整所得金額及び源泉徴収選択口座内配当等・未成年者口座等において契約不履行等事由が生じた場合の所得税徴収高計算書
5.割引債の償還金に係る差益金額の所得税徴収高計算書
6.償還差益の所得税徴収高計算書
従業員が10人未満なら「納期の特例」が受けられる
従業員から徴収した源泉所得税は、基本的には徴収した月の翌月10日に納付が必要です。しかし、人数の少ない企業などでは毎月の作業負荷が大きくなってしまいます。
そのため、従業員が10人未満の事業主は税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、まとめて年に2回納期する特例を受けられます。
1月から6月分:7月10日までに納付
7月から12月分:翌年1月20日までに納付
申請は提出月の翌月末日に承認されますが、却下の場合のみ通知が届きます。たとえば、5月に申請しても承認されるのは6月末日となるため、5月度の源泉所得税は6月10日までの納付が必要な点に注意しましょう。また、従業員が10人以上になった際には、速やかに特例に該当しなくなったことを届け出る必要があります。
参考:[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請(国税庁)
所得税徴収高計算書の記入方法
最もよく用いられる「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」の記入方法について解説します。
1.年度:納付日が属する会計年度を記入します。たとえば、2019年4月1日から2020年3月31日の場合、平成31年または令和元年になりますが、平成と印字された計算書を使う場合は平成を二重線で訂正せずに「31」と記入します。令和と印字された計算書なら、「01」と記入します。
2.税務署名:管轄の税務署名を記入します。隣の「税務署番号」は空欄で構いません。
3.整理番号:税務署から割り振られている整理番号を記入します。不明な場合は、管轄の税務署に確認しましょう。
4.納期等の区分:給与や報酬などを支払った年・月を4桁の数字で記入します。たとえば、給与の支払日が令和2年3月25日なら「0203」です。
納期の特例を受けているケースでは、特例期間における最初と最後の支払月を記入します。たとえば、令和2年1月から6月分の給与を同年1月25日〜6月25日に支払っているケースでは、「自0201」「至0206」です。
5.俸給・給料等:たとえば、従業員への給与なら支払年月日・人員・支給額・税額を記入します。10人に支払ったなら、人員は10、支給額と税額は10人分の合計額の記入となります。
納期の特例を受けているケースでは最大6か月分の納付となるため、「人員」欄には支払った人数×支払った月数を記入する点に注意しましょう。
6.本税:項目ごとの税額を足した金額を記入します。
7.合計額:延滞税分がないなら、本税と同じ金額になります。延滞税分があるなら本税に加算しましょう。
8.徴収義務者:事業主の住所(納税地)と名称を記入します。
数字の記入を間違ってしまった場合は、二重線を引いて訂正し、正しい数字を書き加えればよく、訂正印を押す必要はありません。ただし、「合計額」だけは二重線での訂正ができないため、合計額を間違えたなら書き直しの必要が生じます。
参考:納付書の記載のしかた(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)(国税庁)
所得税徴収高計算書の税金の納付方法
所得税徴収高計算書は、管轄の税務署窓口で入手します。遠方にある場合は、郵送で取り寄せることも可能です。記入した計算書と納付金額を、金融機関か管轄の税務署窓口へと持参して納付します。
または、e-Taxを利用すれば、計算書を取りにいったり持参したりする必要がなく、オンラインで納付を完結することが可能です。詳しい方法は国税電子申告・納税システム
のウェブサイトにも記載されているので、目を通しておくといいでしょう。
所得税徴収高計算書の記入・納付を楽にする方法
従業員に支払った支給額を所得税徴収高計算書に記入するうえで、勤務時間を簡単に管理できるツールを探している事業主もいるかもしれません。Squareには無料で使いはじめることができる「Square スタッフ」があります。
使い方は簡単で、Squareのアカウントを作成した後、Square スタッフの管理ページから従業員一人ひとりの個人情報、時給や残業代の割増率を登録するだけで利用をはじめられます。
従業員は出勤・退勤時にSquare スタッフのアプリまたはSquare POSレジアプリから出勤・退勤ボタンを押すだけで勤務日・欠勤日がデータとして保存されます。
期間を指定して従業員の勤務時間や一人ひとりへの支払額を確認したり、その内容をCSVとしてエクスポートしたりすることもできるので、あとは出力した内容をもとに全員分の支給額を算出して所得税徴収高計算書に記入するだけです。
詳しい使い方は「Squareでタイムカードをはじめる」の記事にも記載しているので、実際に使いはじめる際にはご参考ください。
所得税徴収高計算書の注意点
源泉所得税の納付は、1日でも遅れると「不納付加算税」と「延滞税」が課される点に注意しましょう。不納付加算税は源泉所得税の10%ですが、5,000円未満のケースでは支払は免除されます。
また、源泉徴収を行ったが年末の還付により相殺されたり、個人事業主が青色専従者に少額の給与を支払ったりするケースなどでは、源泉所得税の税額が0円になることもあります。その場合でも、所得税徴収高計算書の提出は必要です。
「0円だから提出は必要ない」と考えがちですが、計算書を提出しなければ0円であることが証明されません。源泉所得税の税額が0円であっても所得税徴収高計算書は確実に提出しましょう。
この記事では事業主が源泉所得税を納付する際に提出する「所得税徴収高計算書」について説明してきました。給与を支払っている事業主が該当する期限までに税務署に提出しなければいけない書類であることが理解できたでしょう。雇用している従業員数によっては毎月行う作業となるので、Square スタッフなど効率化を図れるツールを味方につけておくと、作業時間の短縮が叶えられるかもしれません。
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執筆は2020年3月18日時点の情報を参照しています。2023年6月27日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash