トラブルにもつながる?署名や印鑑について徹底解説

経営者ならさまざまなリスクを想定して会社経営をしていることでしょう。しかし、署名や印鑑によるリスクまで想定している人は少ないかもしれません。そこで、今回は印鑑を押す理由、印鑑や署名によるトラブルについて説明します。

目次


なぜ署名し、印鑑を押すのか?

契約書や株主総会議事録、請求書に領収書、日頃からさまざまな書類に署名(サイン)または押印をしている経営者が多いのではないでしょうか。署名や押印は、「この内容に合意する」と意思表示をし、その内容に責任を負うことを意味する行為です。民事訴訟法第228条では、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と定めています。だからこそ、経営者は署名と印鑑についての正しい知識が求められます。

署名・印鑑によるトラブル

印鑑や署名によって起こる得るトラブルとして以下のような例が考えられます。

例1. 銀行口座からお金を勝手に引き出される
銀行印の紛失または偽造により、銀行の窓口で手続きをして不正にお金が引き出される可能性があります。たとえば、従業員が個人の借金返済に充てるなど私的に流用するため、会社の銀行口座からお金を引き出すことも考えられます。

例2. 知らない間に会社の不動産が他人に売却される
会社の実印の紛失または偽造により、経営者の意思に反して不動産が不正売却される可能性があります。売買契約を交わすだけでなく、法務局で名義変更が行われることも考えられます。

署名・印鑑の基礎知識

署名や印鑑は意思表示をする手段であり、その方法はさまざまです。

署名

契約書などに自分の名前をサインをすることが署名です。仮に印鑑を押さなくても、意思表示をしたものと判断されます。そのため、署名した以上は「印鑑を押していないから責任はない」と主張することは難しいと考えられます。署名をすれば、必ず筆跡が残ります。筆跡鑑定によって本人であることが特定できれば、意思表示をしたことが証明されます。

実印

実印は個人と法人に区分され、それぞれ一個しか登録できません。そのため、次の証明書と併せて本人確認ができることから、重要書類に向いています。

  • 個人:印鑑登録証明書
  • 法人:印鑑証明書

実印が必要な書類は主に以下のものです。

  • 不動産の取引
  • 法人の登記
  • 金融機関からの融資
  • 代表取締役に就任する際、法務局に提出する「就任承諾書」

銀行印

実印と銀行印を併用する会社もありますが、両者の役割は異なります。銀行印は金融機関とお金をやり取りするための印鑑です。

たとえば、経営者の意思に反して、従業員が銀行口座から普通預金を引き出したとします。法律上、預金者を除いた他人の引き出しは無効ですが、銀行印と金融機関への届出印の見分けがつかなければ、お金を引き出せてしまう可能性があります。

認印

公的機関や金融機関に届けていない印鑑のことを指します。三文判(さんもんばん)とも呼ばれます。通常、既製品の比較的手に入りやすい値段で購入した印鑑を認印として使用している会社が多いのではないでしょうか。印鑑登録がされていない認印は荷物の受け取り時など重要度の低いことに使用するのは問題ないですが、実印が必要な重要書類の押印に用いるのは避けるべきでしょう。

署名・印鑑のトラブルを回避するポイント

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署名と押印によるトラブルは、最悪の場合会社の存続に関わることもあります。そこで、署名・印鑑に関わるトラブル回避のポイントを解説します。

安易に印鑑・署名を用いない
もし仮に、「勝手に契約書を作成した」など書類の無効性を主張することが起きた場合、押印・署名をした本人の意思表示があったかどうかを証明しなければなりません。押印の場合、印鑑(登録)証明書と実印をつき合わせて本人確認する必要があります。署名の場合は筆跡が本人の意思表示を証明するものになります。実印を押し、署名をした書類に対して、その無効性を主張するのは簡単ではないことが考えられます。内容を確認せずに安易に押印、署名をしないことをおすすめします。

記名押印するときは実印と印鑑(登録)証明書をセットで用いる
認印による記名押印は本人確認ができません。そのリスクを回避する方法が実印と印鑑(登録)証明書をセットにして、客観的に本人確認ができるようにするのがポイントです。

会社の実印と銀行印を別々に管理する
会社の実印や銀行印を安易に使えないようにしている会社が多いのではないでしょうか。両者は別々に管理することをオススメします。たとえば、経理担当の従業員に銀行印を用いてお金を引き出す裁量を与えているとします。そのとき、会社の実印と共に使用している場合、同時に不動産の所有権を移転させるなど会社の重要事項を経営者の意思に反して実施する権限を与えてしまっている可能性があります。

実印に偽造の防止策を講じる
実印や銀行印の偽造は、印影をスキャナーで読み取ったデータをもとに作成します。そのため、書類に実印を押すときは、署名や記名した文字の上に印影をかぶせることがポイントとなります。また、契約書や株主総会議事録など書類のひな型を作成する段階で、「甲野太郎 印」など記名押印の欄に「印」という文字をあらかじめ盛り込む方法もあります。

銀行印は厳重に管理する
銀行印は文字の上にかぶせて押さないことが多いため、偽造防止は実印より難しくなります。そのため、口座別に銀行印を使い分ける、金庫で管理するなど厳重に管理する必要があります。

もし実印や銀行印を紛失したら

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実印や銀行印の紛失は不正取引に使用されるリスクがあります。当然、紛失した場合には素早く対処することが必要です。そこで、対処方法を紹介します。

実印を紛失したら

実印の紛失とは、実物と印鑑証明書を無くすことを意味します。対処方法は個人と法人で異なります。

1. 個人
すぐに住まいの市区町村に電話をしましょう。たとえば、東京都板橋区の場合は電話で印鑑登録した個人の実印を無効にすることができます。その後、改印手続きを行います。

2. 法人
すぐに法務局に出向いて改印手続きをしましょう。印鑑登録した会社の実印を電話で無効にすることはできません。

銀行印を紛失したら

すぐに金融機関に電話を入れましょう。銀行の中には電話で届け出た銀行印を無効にし、引き出しができないように措置を取ってくれるところもあります。

脱ハンコの流れ

コロナ禍におけるリモートワークの導入やペーパーレス推進の動きにより、電子印鑑や電子契約システムを利用する企業が増え、脱ハンコの流れが加速しています。印鑑によるトラブルを減らすには、印鑑を使う場面をできる限り減らすという逆の発想もあります。印鑑の出番が減れば、悪用される可能性も減るでしょう。

たとえば請求書です。これまで請求書に印鑑を押していた場合には、この過程をなくすところからはじめてみてもいいかもしれません。請求書に印鑑を押すことは法的に義務付けられていません。さらに、オンライン上で作成・送信できるクラウド請求書を導入すればペーパーレスも叶えられるので、保管する手間と場所が削減できるなどのメリットを感じることもできます。

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署名と印鑑は本人の意思表示を証明する手段であり、その行為には責任が伴います。そのため、認印で記名押印した場合、本人の意思を確認できないことを逆手にとって、不利な状況になった際に契約などの無効を主張して責任回避するリスクが潜んでいます。

また、実印や銀行印が偽造され、不正取引に用いられる可能性もゼロでありません。これらの事態を回避するために経営者は署名と印鑑についての正しい知識を身につけることが必要なのです。


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執筆は2018年4月5日時点の情報を参照しています。2023年2月1日に記事の一部情報を更新しました。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash

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