最近では副業の解禁が徐々に始まっていることもあって、会社に勤めながら副業を行う人が増えてきています。しかし、本業の給与所得以外に収入がある場合、会社が代わりに行ってくれる税金の申告を自分で行わなければなりません。確定申告と聞くと、手続きが難しいものだと感じてしまう人も多いのではないでしょうか。
今回は確定申告の中でも、比較的手続きが簡単な白色申告について解説します。
白色申告とは
所得収入がある人は、毎年3月15日までに前年の課税対象所得を計算し、税務署へ申告しなければなりません。この手続きを確定申告といい、白色申告と青色申告の2種類の申告方法があります。
白色申告をするには?
白色申告を行おうとする場合、特別な手続きなどは必要ありません。一方、青色申告の場合には、事前に税務署に青色申告承認申請書の提出をしなければなりませんので、この手続きを行っていない人は、自動的に白色申告が選択されることになります。
白色申告の特徴
以前の白色申告制度では、所得の合計が300万円を超える事業者にのみ、記帳や帳簿保存が義務付けられていました。しかし、平成26年度の税制改正により、所得の合計が300万円以下の事業者にも、記帳や帳簿保存が義務付けられるようになりました。
帳簿などの保存期間は法律により定められており、法定帳簿で7年、任意帳簿などは5年とされています。なお、白色申告の場合の確定申告時に作成が必要になる書類としては、収支内訳書、確定申告書Bがあります。
また、白色申告の特徴として、税務署が税務調査の際に、必要に応じて税務署が所得を推計し、課税をすることがあります(推計課税)。この税務調査に基づく更生や決定などに不服がある場合は、税務訴訟を起こすことも可能です。
白色申告の流れ
白色申告の際には、税務署へ確定申告書と収支内訳書を提出しなければなりません。
白色申告は、下記(1)から(3)の流れで行われます。
(1)記帳
(2)決算
(3)収支内訳書の作成と確定申告
(1)記帳
白色申告をする場合の帳簿の様式や種類については、特に定めがないため、個々の取引の実態に応じて作成します。白色申告の取引は大きく4つに区分されます。
【収入金額】売上、雑収入等
【必要経費】仕入、経費
実際の記帳では、「取引年月日」「摘要」「区分ごとの金額」などを記入していき、お金の増減を把握します。
(2)決算
決算とは会計年度末に行なう作業であって、「棚卸表の作成」や「減価償却費の計算」などをする必要があります。
棚卸とは、年度末における商品などの在庫の数量とその資産評価をすることをいい、原則として12月31日に行います。ただし、棚卸を行う日以降に売上や仕入が発生しないタイミングで、12月31日時点の棚卸高を計算することも差し支えないとされています。
減価償却とは、固定資産の価値を時間の経過とともに費用計上していく考え方のことです。固定資産の中には、使用期間が長いほど価値が下がっていく物があるため、取得した時点で全額を経費とするのではなく、一定の期間で分割しながら経費計上するという方法が取られます。
(3)収支内訳書の作成と確定申告
確定申告にあたって、収支内訳書を作成する必要があります。収支内訳書は、これまで記帳した日々の取引と、決算により明らかにした棚卸や減価償却に関する情報をもとに作成していきます。収支内訳書の作成ができたら、確定申告書とともに管轄の税務署へ申告します。確定申告書については、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、画面の案内に従って作成することが可能です。
白色申告のメリットとは
白色申告のメリットとしては、青色申告に比べて手続きが簡単なことが挙げられます。青色申告の場合は、複式簿記により帳簿を記帳しなければならないため、一定の簿記の知識が求められます。一方、白色申告の場合は、単式簿記による帳簿記帳でよいため、簿記の知識がなくても、簡単に記帳することができます。また、青色申告のように事前に税務署への申請が必要ないことも、手続きが簡素であるため、メリットということができます。
なお、単式簿記とは、単純にお金の増減を記録する記帳方法であり、複式簿記とは、お金の増減をその原因とともに記録する記帳方法のことです。たとえば、借入をすることにより手元のお金が増えた場合、単式簿記なら収入として表記されますが、複式簿記であれば、お金の増減がその性質とともに記録されているので、それが借入であることが帳簿上から読み取れることになります。あくまで記帳上の話ではありますが、事業の状況を把握するうえでは、記帳方法は複雑ですが、複式簿記の方がメリットが大きいといえるでしょう。
白色申告のデメリットとは
白色申告のデメリットとしては、青色申告の特典を受けられないということが挙げられます。青色申告の特典にはどのようなものがあるかを見ていきます。
特別控除
青色申告の場合は、10万円または65万円の特別控除を受けることができます。課税所得は、稼いだ所得から事業に必要な経費を差し引いて計算されます。さらに特別控除が適用されると、その分だけ課税所得を引き下げることができるため、最終的な納税額を減らすことができます。
65万円の特別控除の要件は、下記のとおりです。
(1) 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。
(2) これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。
(3) (2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。
引用:No.2072 青色申告特別控除(国税庁)
なお、10万円の特別控除は、上記65万円の特別控除の対象とならない青色申告者が対象となります。
赤字の繰り越しと繰り戻し
青色申告では、所得に損失(赤字)が生じた場合、その損失額を翌年以降の3年間に繰り越して、各年の所得金額から控除することができます。赤字分を翌年以降の利益が出たときに控除することで、課税の対象となる所得を減らすことができ、節税につながります。また、赤字が出た前年も青色申告している場合には、繰り越しに代えて、前年に繰り戻し、前年分の所得税の還付を受けることも可能です。前年の課税所得を減らして、所得税を払いすぎていたという状態にし、還付を受ける仕組みです。
このように白色申告では、青色申告に適用される特典が使えないため、節税の観点において、デメリットとなってしまいます。
どの時点で青色申告を検討するべき?
白色申告を行っている人の青色申告への切り替えは、どのタイミングで行うべきでしょうか。複式簿記での処理が可能あって、帳簿の準備ができるのであれば、いつでも青色申告に代えても良いと考えられます。白色申告と青色申告とでは、節税効果が全く違うため、多少の手続きの煩雑さはあるものの、青色申告の方がメリットが大きいといえます。最近では、便利な会計ソフトにより、青色申告のハードルが下がっています。手続きの面においても、白色申告との差が縮まってきています。これまで白色申告を行っていた人も、メリットの大きい青色申告への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
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執筆は2020年2月12日時点の情報を参照しています。
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