税務調査とは?実際の流れとトラブルを防ぐ帳簿管理のコツ

「税務調査」と聞くとどうしても身構えてしまうという経営者も多いのではないでしょうか。「税務調査」とは、確定申告の内容に対して税務署が行う調査のことです。万一申告内容に誤りが見つかると、追徴課税が発生する可能性もあります。

経営者の中には、「税務調査は大企業が受けるもの」「中小企業や創業したての企業、個人事業主には縁遠い話だ」と思っている人もいるかもしれませんが、決してそうとはいい切れません。いざというときに焦らず対応するためにも、税務調査の内容や流れを理解しておくにこしたことはありません。知識があって適切な帳簿管理ができていれば、過分に恐れることはないのです。

本記事では税務調査の流れやトラブルにならないための帳簿管理のコツを説明します。

目次



税務調査とは

税務調査とは、税務署が納税者の申告内容が正しいかを確認するために行う調査のことです。国税庁が毎年公表している「法人税等の調査事績の概要」によると、法人に対する実地調査件数は、2018年が99,000件、2019年が76,000件、2020年が25,000件、2021年が41,000件です。

実地調査件数は減少傾向にありますが、単純に税務調査自体が行われなくなっているとみなすことはできず、新型コロナウイルスの影響で、調査件数が減少したことは考慮しなければいけません。また、調査件数は減少していますが、1件あたりの追徴税額は増加傾向にあります。。

参考:
令和元事務年度 法人税等の調査事績の概要(2020年11月、国税庁)
令和2事務年度 法人税等の調査事績の概要(2021年11月、国税庁)
令和3事務年度 法人税等の調査事績の概要(2022年11月、国税庁)

jp-blog-taxinvestigation02

税務調査の種類

税務調査には、大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

「任意調査」とは、脱税などの疑いのない、普通の企業を対象に行われる調査です。事前に調査が行われる旨の連絡が入るので、突然調査官が会社に押しかけるということはありません。といっても、調査の場で調査官が書類内容に関する質問をするので、黙秘や虚偽の報告などは許されません。調査官の質問によどみなく答えられるよう、しっかりと事前準備をしておきましょう。

一方、脱税の疑いが濃厚な場合に行われるのが「強制調査」です。いわゆる「マルサ」、国税局査察部が行う調査のことです。強制調査は脱税の隠蔽が悪質である場合や、脱税額がかなり大きいと想定される場合に、裁判所の令状をもって行われます。

税務調査の流れ

実際の税務調査はどのような流れで行われるのでしょうか。ここでは任意調査にしぼってその流れを簡単に説明します。

税務調査は1日から3日(企業の規模で変わります)で完了するスケジュールで行われるのが一般的です。企業や個人は事前に日程調整の連絡を受け、いつ税務調査を受けるかが決まります。

税務調査でまず行われるのは、事業概要の説明です。取引先の状況や、役員の情報を確認されることもあります。その後、帳簿のチェック、領収書と帳簿の付け合せ、仕分けの確認などが行われます。すべての確認が終わったあと、指摘事項を申し渡されます。税務調査の結果は、調査から1カ月ほどで連絡があるのが一般的です。指摘の状況によって、修正申告が求められる場合と、指導でとどまるケースがあります。追徴課税が求められることもあります。

税務調査の対象になりやすい企業・個人の特徴

税務調査の目的は、適切に納税が行われているかどうかを確認するという点にあります。そこから考えると、企業と個人、それぞれ次のような場合に税務調査の対象になりやすくなると考えられます。

【企業】

  • 利益が急に増えた
  • 消費税の還付を受けた
  • 多額の経費が計上されている
  • 事業所得の赤字が続いている
  • 消費税の課税対象となる売り上げが1,000万円ギリギリ

【個人】

  • 税務申告をしていない
  • 売り上げが大きく増加している
  • 申告内容に不審な点がある(たとえば「確定申告書と取引先の支払調書で取引金額に差異がある」 「売り上げに対して経費が多すぎる」など)

事業を営むにあたって予想外のことは起こりえます。たとえば事業環境が好転したり、業務の効率化に成功したりして急激に利益が増えることがあり、意図せず税務調査の対象になりやすくなってしまうことはあります。

一方で、売り上げが1,000万円を少しだけ下回っている場合や、多額の経費を計上している場合は、これらが通常通り事業を営んだ結果のものなのか、それとも何らかの意図があるのか、今一度検証する余地があります。通常通り事業を営んだ結果の数字でなければ、税務調査が入るか入らないかにかかわらず説明可能な数字に修正が必要です。うしろめたさや税務調査への不安をかかえていては、事業に専念できません。

さらに、上記に該当しない企業や個人も調査対象になる可能性があるのが任意調査です。いつ税務署から連絡が来てもスムーズに対応できるよう、適時事業状況をチェックし、適切に会計処理を行うことが重要です。

jp-blog-taxinvestigation03

税務調査時に準備しておくべきもの

税務調査時では、事業のお金の流れに関する内容や、取引の内容が確認できるような資料の提出を求められます。調査の連絡があったら、以下の資料を準備しておきましょう。また、経理担当者のパソコンの中も確認し、整理しておくことをおすすめします。

【企業と個人で共通の資料】

  • 総勘定元帳、仕訳帳などの帳簿類
  • 帳簿作成の元となる資料(領収書、請求書、小切手控、預金通帳など
  • 納品書
  • 契約書
  • 稟議書(りんぎしょ)
  • 議事録
    など

【企業がさらに用意しておくべき資料】

  • 登記簿
  • 定款
  • 株主総会議事録
    など

帳簿などの書類には5年から長い場合で10年の保存期間の規定があります。資料の種類や、企業か個人か、その他の条件によっても保存期間は異なります。

参考:
記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁
帳簿書類等の保存期間|国税庁

税務調査では過去数年分の資料の提出が求められることがあります。税務署からの指示に基づいて、少なくとも直近5年分程度の資料はすぐに用意できるように準備しておきましょう。

税務調査の際、調査官が資料を税務署に持ち帰って調べたいと申し出るケースもあります。手元にないと困る資料がある場合、コピーやスキャンをして準備をしておくとよいでしょう。さらに、普段から重要資料のバックアップをとるようにする、クラウドベースのサービスを利用してデータを保存しておくなどするとより安心です。

税務調査の際にチェックされる内容

税務調査では、帳簿の内容や領収書の中身などを細かく確認されます。よくある指摘事項としては、次のものが挙げられます。

  • 収益や費用の属する期がずれている
  • 減価償却資産を一括して計上している
  • 事業と関係のない交際費を計上している
  • 外注実績がないのに外注費を計上している

現状の経理処理に不安がある人や、税務調査の連絡があって不安だという人は、このような内容を中心にセルフチェックしてみるとよいでしょう。詳しくは後述しますが、申告内容に誤りがあった場合には、税務調査前に自分で修正申告を行うことでペナルティを減らすことができます。

税務調査ということで、税法の知識が必要な難しい指摘が多いのではと不安に思う人もいるかもしれませんが、実際の指摘事項は専門知識がなくても理解しやすいものです。わからないことや納得できないことがあれば、調査官に質問もできます。自分で適切な対応ができるか不安がある場合には、顧問税理士に立ち会いを依頼するのも一つの手です。

税務調査を受ける際のポイント

税務調査を受けることになったら、以下のポイントに注意するとよいでしょう。

  • 顧問税理士がいる場合には事前に打ち合わせしておく
  • 必要な書類は必ずコピーしておく
  • 質問には正直に答える
  • 質問されたことのみ答える

顧問税理士がいる場合には、税務調査の連絡があったことを伝え、事前に打ち合わせをしておきましょう。専門家の立場から適切なアドバイスを得られるだけでなく、精神的な安心感にもつながります。顧問税理士がいない場合は、すでに触れた内容を参考に必要書類を用意しましょう。嘘偽りなく申告を行ったのであれば、過度に不安を感じる必要はありません。また、前述のように、調査官が資料を持ち帰る可能性もあります。必要な書類は必ず事前にコピーしておきましょう。

実際に税務調査を受けるにあたっては、質問には正確かつ正直に、質問されたことにのみ答えてください。質問に曖昧に答えたり、質問に関係のないことを話したりすると、余計な嫌疑をかけられる可能性もあります。

「経営者として自身の事業について知っていることを話すだけ」「申告は可能な限り正確かつ正直に行った」と考えると緊張や不安に思う気持ちを落ち着けられることでしょう。

もし申告内容に誤りがあることがわかったら

税務調査の連絡があり、税務調査を受ける準備をする中で、過去の書類にミスがみつかるかもしれません。このような場合には税務調査の前に自分から過少申告についての修正申告をすることをおすすめします。

申告内容に不備があると追徴課税が発生します。過少申告や未納付があった場合にはペナルティとして「加算税」が課せられます。加算税にもいくつか種類がありますが、たとえば申告額が少なかった場合に課せられる「過少申告加算税」の税額は原則10%です。しかし、税務調査の事前通知が行われる前に修正申告を行った場合は、加算税の対象にならない可能性が高くなります。事前通知後でも調査終了前に修正申告を行った場合でも税(原則5%)が軽減されます。

申告に間違いがないのが望ましいですが、予期せぬ間違いが起こる可能性もあります。もし事前通知を受けたら、社内で申告内容を再度確認し、迅速に不備に対応できるようにしておきましょう。

jp-blog-taxinvestigation04

万一のトラブルを減らすための帳簿管理のコツ

税務調査で受ける指摘は、専門的なものというよりも、「帳簿管理のミス」や「経費に関する知識が曖昧だった」など経理の基本的な知識不足によるものがほとんどです。すべてを自力で解決しようとせず、会計ソフトや専門家に頼ることを考えてみるとよいでしょう。

会計ソフトを活用する

自社内で正確な知識を持って経理作業を行うのが理想ですが、中小企業や創業間もない企業の場合、経理の経験の少ない人材が経理処理を担当することもあるでしょう。個人事業主であれば、事業主が経理処理をすべて行うことも少なくありません。

経理について自信がない場合におすすめしたい方法が「会計ソフト」の活用です。会計の知識がなくても簡単に帳簿をつけられるものが多く、思いがけないミスの防止にも役立ちます。ま会計ソフトを使いながら徐々に用語やデータの処理に慣れ、経理知識を身につけていくこともできるでしょう。また、売り上げや経費の状況も自動で計算されるので、経営状況の把握にも役立ちます。便利なツールはできるだけ活用して、経理業務の効率化と精度向上を図りましょう。

専門家に相談する

個人事業主の中には顧問税理士を依頼せずに自分で経理・会計処理をしているという人もいることでしょう。特に経理が苦手、税務調査が不安という人は、思い切って顧問税理士を雇うことを考えてもよいでしょう。顧問税理士を依頼すると少なくない費用が発生しますが、確実に税務処理を行い、不安を解消して事業に専念するための必要経費と考えることもできます。

いきなり顧問税理士を雇うのには戸惑いを感じるというという人は、地域の税務署や税理士会に相談してみるとよいかもしれません。税務署や税理士会というと硬いイメージを持つ人もいるかもしれませんが、無料で相談会や指導をしていることもあります。

税務調査を理解すれば、恐れる心配はない

税務調査は、あくまで申告の内容を確認するためのものですから、故意の脱税を行っていない場合には不安に思う必要はありません。もちろん、申告内容に不備があった場合は追徴課税などがありますが、それは払うべき税金を納めるだけのことであり、重い罰則が課せられるわけではありません。事業を営んでいればミスは誰にでもあることです。

税務調査の本質と流れを理解して、いざというときにもあわてずに対応できるように準備しておきましょう。経理・会計業務やその知識に不安がある場合は、会計ソフトを導入したり、専門家に相談したりすることをおすすめします。

Squareで経理・会計業務の負担を軽減

Squareのサービスを会計ソフトと合わせて導入してみませんか。Squareを使えば会計業務をはじめ、さまざまな業務を効率化できます。Squareを経理・会計業務の軽減という観点から見てみると、次のような特徴があります。

  • Squareの無料アカウントを作成するだけで、POSレジやオンライン請求書、ネットショップ開設などさまざまなサービスを利用できる
  • Square 請求書ではオンラインで請求書の発行が可能
  • Square 請求書のリンクも簡単に共有ができ、請求業務にかかる時間を短縮
  • マネーフォワードをはじめとする大手会計ソフトウェアとの連携も可能なため、帳簿作成や管理の手間もかからず、会計業務の負担を軽減

Squareの利用料は、決済時にかかる手数料のみです(Square リーダーなどのキャッシュレス決済端末を利用する場合は端末の購入費用がかかります)。アカウントの作成費用や月額の利用料などはかかりません。もちろんキャンセル料もかかりません。基本情報を入力して審査を受ける必要はありますが、審査が通れば最短翌営業日からサービスを利用できます。

Square 請求書は、特に会計面でおすすめしたいサービスです。Square 請求書を利用すれば、いつでもどこでもオンラインで請求書の発行ができます。請求書のリンクはお客様や取引先と簡単に共有でき、支払状況をリアルタイムで把握できます。これまでの請求書を作成して、メールに添付して、支払をチェックする……というプロセスを大幅に効率化できます。

Squareは本記事でお勧めした会計ソフトとの相性も抜群です。具体的には会計ソフトfreeeまたはマネーフォワードとの連携が可能です。Squareで扱う売上データを直接会計ソフトに取り込めるので、手作業でデータを入力する必要はありません。ソフトウエアの力を借りて日々の帳簿作成業務のミスを防げれば、税務調査への不安もやわらぐことでしょう。

また、Squareならリアルタイムの売り上げを把握できるだけでなく、過去の売り上げと比較し、事業の状態を時系列で把握することも。データはクラウド上に安全に保管されているので、突然税務調査の通知があっても安心です。

本記事では税務調査について帳簿管理のコツとともに説明しました。税務調査を漠然とおそれるのではなく、どのような調査なのか、どう対応したらよいのか、日々できる備えは何なのか知っておくと、もし税務調査が入ることになっても過度の不安をいだかずに調査を受けられるはずです。ぜひ本記事をきっかけに改めて税務調査について知り、会計ソフトやSquareのサービスを利用しつつ、適宜専門家のアドバイスを受けながら会計・経理業務を洗練させてください。

Square 請求書なら、作成からオンライン送信まで簡単スピード対応

請求書の作成、送信、支払いまでの流れが簡単に。自動送信、定期送信など便利機能も無料。


Squareのブログでは、起業したい、自分のビジネスをさらに発展させたい、と考える人に向けて情報を発信しています。お届けするのは集客に使えるアイデア、資金運用や税金の知識、最新のキャッシュレス事情など。また、Square加盟店の取材記事では、日々経営に向き合う人たちの試行錯誤の様子や、乗り越えてきた壁を垣間見ることができます。Squareブログ編集チームでは、記事を通してビジネスの立ち上げから日々の運営、成長をサポートします。

執筆は2019年9月25日時点の情報を参照しています。2022年12月20日に一部情報を更新しています。当ウェブサイトからリンクした外部のウェブサイトの内容については、Squareは責任を負いません。Photography provided by, Unsplash